- 「小さな家の物語という本はどんな本かな?」
- 「中村好文さんの住宅設計の考えを知りたい」
この記事ではこのようなテーマでお伝えします。
今回の記事では中村好文さんの著書『小さな家の物語』についてお話していきます。

目次
中村好文さんとは?
中村好文さんは建築家で、日本大学生産工学部居住空間デザインコース教授です。
武蔵野美術大学建築学科卒業後、都立品川職業訓練校木工科にて家具製作を学び、吉村順三設計事務所に勤務。1981年に独立し「レミングハウス」を設立。現在に至ります。
小さな家・上総の家Ⅱ
本書は「小さな家の物語」。
小さな家は「上総の家Ⅱ」。
中村好文さんは独立してから設計した住宅は250軒を超えているそう。
4坪に満たない独居自炊の小屋から図書館並みの書庫を備えた住宅まで。北海道から沖縄まで。二十代の若夫婦から、老齢のクライアントまで。
規模や、場所柄や、クライアントの年齢はまちまちでしたが、ぼく自身が設計に向かう心構えはまったく変わりありませんでした。そして、なにがいちばん変わらなかったかというと、どの家でも、そこにぼく自身が住むつもりで設計してきたことです。
そんな設計をしてきた中村好文さんがとりわけお気に入りに感じている家が三軒あるそうです。そのうちのひとつが本書で取り上げる「上総の家Ⅱ」です。
1992年に完成した小さな家
小さな家・上総の家Ⅱは1992年に完成。
家の歴史としては27年ほど。
当初住む予定だったクライアントが家庭の事情で「新築を取りやめたい」と言い出した後、最終的には母屋の住人の子息が住むことに。
その後、築16年を経て住人が手放すことになります。
この小さな家が不動産屋の手に渡ったら即座に解体されてしまうのは目に見えていたため、住人の姉の山口美登利さん、佐久間年春さん、そして、中村好文さんの三人で建物と土地を買い取ることになったそうです。
小さな家はこんな家
小さな家・上総の家Ⅱは床面積21坪、70平方メートルほどの小さな家。
屋根は片流れになっていて、外壁は杉板張り。
時が経ち、いい意味で古びてくることで味わいを増した外観の印象。
カーブした竹簾(たけすだれ)製のフェンスとユキヤナギの生垣が外観をさらに印象的にさせています。
この住宅のいちばん大きな建築的な特徴は家の中に斜めによぎる「壁」を建てたこと、そしてその壁に六つの穴(開口部)を穿ったことです。
この家に暮らすことは、壁にあけた開口部を通り抜けて、壁のあちらに行ったり、こちらに来たりすることを繰り返すことでもあります。
間取りはかぎりなくワンルームに近く、簡素な佇まい。

一階はアトリエと吹き抜けのあるリビングダイニング、そしてキッチン。
使われている素材は内壁は漆喰塗り(左官塗り壁仕上げ)。
フローリングには昭和の中頃まで主に路面電車やバスの床材として使われていたアピトンという素材だそうです。
キッチンは造作キッチンで、レイアウトはシンプルな二列型のオープンキッチン。
小さな家の物語を読んでみて
小さな家・上総の家Ⅱは色々な経緯があって、中村好文さん含めて三人で買い取ってシェアしている家。
本書から感じ取れたのは「家の楽しみかた」。
家って面白いよね。住み手が愛情をかけると、みるみる耀き出すんだから。
手を入れ、丁寧に暮らし、掃除して、空気を通してあげるとか。
家に愛情をかけて、手を入れることで、何気ない日常がじんわりと味わい深いものになる。
とりたてて贅沢でも、豪華でもない家なのだけれども、素材や心地よさなんかを味わうことのできる家。
そんな家を建てて、それを楽しむ。
そんな家の楽しみ方が伝わってくるような文章でした。
三人でシェアして、それぞれに家を楽しむ。
そんなことも面白そうでした。