- 「捨てコンクリート(捨てコン)とはどういう意味ですか?」
- 「捨てコンクリート(捨てコン)という言葉を聞いて、意味を知りたいです」
この記事ではこのような疑問にお答えします。
目次
捨てコンクリート(捨てコン)とは?
捨てコンクリートとは、建物を建てる前の地盤の上に使用されるコンクリートのことです。
家を建てるためには基礎工事をしなければいけませんが、ベタ工事や布基礎などと呼ばれる工事の前に、捨てコンクリートを5センチほど流し込む作業が必要になる場合があります。
分かりやすく言えば、「土台を作るための土台」といったイメージです。そして、このコンクリートは直接的に家の強度などに関係するものではなく、土地の状態などによっては使用されないこともあるため、捨てコンクリートという名前がついています。
「捨て」コンクリートの意味を詳しく解説
捨てコンクリートの「コンクリート」はわかりやすいです。コンクリートはコンクリートで骨材(砂利)をセメントと混ぜて固めた、あの「コンクリート」です。一般的なやつですね。
じゃあ、「捨て」ってどういう意味なのでしょうか?
色々と建築業界にいて感覚的に感じる「捨て」は「ゴミをポイ捨て」というような「捨てる」というイメージの「捨て」ではなく、どちらかというと「捨て身の体当たり」みたいな「捨て」で「犠牲にして、見捨てる」ようなニュアンスを含んでいると感じます。
土台を作るための土台として犠牲になるコンクリート。メインの強度を求められるような、鉄筋の入るようなコンクリートではなく、そのメインのコンクリートのために犠牲になって、その礎を作るためのコンクリート。そういうような意味合いで、「捨て身・犠牲」になって使われるコンクリートという意味合いだろうと思います。
捨てコンクリート(捨てコン)の役割について
捨てコンクリートの役割としては、まず作業性の向上が挙げられます。
地面が砂利などの場合はボコボコしていて作業が行いにくいですが、捨てコンクリートを流すことで平面になります。また、基礎を乗せる部分の状態を改善することも可能です。
さらに、捨てコンクリートを流し込むことで「墨出し」の作業がしやすくなるという役割もあります。
墨出しとは、建物を建てる工事をする前に柱や床、壁の位置などを線で記して基準を作る作業のことです。
また、地盤を作るためにコンクリートが使用されますが、コンクリートを流すためにはその分のくぼみが必要です。つまり、穴を掘ることで「高さ0メートル」と決めた基準の位置が分からなくなってしまいます。
そこで、基盤工事の前に捨てコンクリートを流し込んでおいて、ぶれることのない基準を作っておきます。捨てコンクリートの高さが変わると建物全体の高さもずれることになるため、非常に重要な役割があると言えます。
特に、誤って高さを出しすぎた場合は修正作業が非常に難しいため、慎重に作業が進められます。また、場合によっては型枠を支えるための土台として活用されることもあります。捨てコンクリートを固めて、その上にさらに長方形の捨てコンクリートが点在している場合は型枠を支える土台であることが考えられるでしょう。
捨てコンクリート(捨てコン)と普通の鉄筋コンクリートの違い
捨てコンクリートと普通の鉄筋コンクリートの違いとしては、鉄筋が入っているか入っていないかという点が挙げられます。
普通の鉄筋コンクリートは基礎部分に使用されるものですが、その上に家を建てるわけですから確かな強度が求められます。そのため、鉄筋を入れて強度を高めているのです。
捨てコンクリートは地面をならしたり、墨出しをするためだけに使用されるものですから、強度は必要ありません。
具体的には、鉄筋コンクリートの半分くらいの強度があれば良いと考えられています。そのため、鉄筋が入っていないコンクリートが使われることが多いです。
ちなみに、捨てコンクリートは鉄筋が入っていないことから「無筋コンクリート」と呼ばれることもあります。
捨てコンクリート(捨てコン)は絶対に必要?
墨出しの作業をしやすくしたり、基礎を作る地面の状態を改善する役割を持つ捨てコンクリートですが、絶対に必要なものではありません。
墨出しをしやすくするためのものということは、その他の方法で基準を記すことができれば不要です。
また、建物の強度に影響を及ぼすものでもないため、使わなかったからといって家の強度が損なわれることはありません。さらに、地面がもともと平らで状態があれば、使用されないこともあります。
ですが、基礎の鉄筋が土の水分に触れることで錆びたり劣化したりすることがないように、地面の状態が良くても捨てコンクリートを使用した方が良いと考える業者もいます。また、外周部にのみ流すケースや基礎を作る部分全体に流すケースなどがあり、業者によって使用方法はさまざまです。
不安や疑問がある場合は、遠慮せずに担当者に尋ねてみましょう。
捨てコンクリート(捨てコン)はどのように打たれる?
まずは、土地の中の家を建てる箇所に目印として縄が張られます。
そして、基礎を埋め込むための根切り作業が行われます。根切り作業とは、ショベルなどの重機で土を掘り起こすことです。
その後、砕石が全体に敷かれて、転圧機などで地面が固められます。次に、ポンプ車が現場に入り、生コンクリートをネコに入れます。
ここでのネコとは、建築現場などでよく使用される一輪の手押し車のことであり、ネコを使って必要な箇所まで運ばれたコンクリートが流し込まれます。なお、捨てコンクリートは必要な量がそれほど多くないため、ネコを使っての運搬で十分です。
その後、高さを測りながら正しい高さになるようにならして調整します。高さが均一になれば、養生して固まるのを待って作業は完了です。
ちなみに、捨てコンクリートの養生期間としては、1-3日程度が必要とされます。この日数は普通の鉄筋コンクリートとそれほど変わりません。
また、養生することの理由としては、誤って触ることで形が変わるのを防ぐためです。コンクリートは、固体になるまでの間に形が変わるとその形のままで固まってしまいます。万が一触ってせっかく均一にした高さが変わることを防ぐために、人の出入りが禁止されるのが一般的です。
防湿シートが敷かれることも多い
捨てコンクリートを打つ前には、防湿シートが敷き詰められることも多いです。
防湿シートを敷くことで、地面からの湿気が流れ込むことを防ぐことができます。そして、乾燥状態を保つことで使用されている木材を保護し、シロアリによる被害なども防げます。シート1枚を敷くというシンプルな作業ですが、家の耐久性にとても大きく関わるため、重要な工程の1つだと言えるでしょう。
そして、捨てコンクリートは防湿シートの上に打たれることが多いため、シートをしっかりと固定するという役割もあります。
捨てコンクリートの後に基礎工事
捨てコンクリートの後に基礎工事が進みます。基礎工事の記事はこちら。
同じ基礎工事の中で「布基礎」とはどういう意味かの解説記事はこちら。