壁紙ではなんとなく部屋の雰囲気が合わない、漆喰の壁に憧れているけれど実はどういうものかハッキリ分からないという方も多いのではないでしょうか。
漆喰を塗った壁はおしゃれで調湿機能があるため、最近では漆喰を使った壁を好まれる方が増えてきました。
そこで今回は、漆喰の特徴やメリット・デメリットについて解説していきます。
漆喰について疑問に思っていることがスッキリ解決しますのでぜひ最後までごらんください。
目次
漆喰とは?
漆喰とは、消石灰を主原料とした塗り壁材のことで、そもそものルーツは貝殻やサンゴ、有孔虫など、海の生物遺体が堆積した石「サンゴ礁」からできています。
その石は「石灰石」と呼ばれていて、水を加えて焼いたものが消石灰になります。
さらに、消石灰に「スサ」と呼ばれる繊維質の植物を入れ、糊を加えたものが漆喰です。
少しまとめると、漆喰ができるまでの過程は、
サンゴ礁→石灰石→消石灰→漆喰
と、なります。
漆喰は、壁塗り素材として使われるまでの間さまざまな工程を経て作られているのです。
珪藻土の壁との違い
漆喰の壁と似たような素材に「珪藻土(けいそうど)」があります。
珪藻土は植物性プランクトンの化石ということで、漆喰の元々の素材と似たようなところがあります。
素材としても、かなり近いものであることがわかります。
詳しくは別の記事でまとめています。
昔から使われてきた左官塗り壁材
漆喰は日本古来の壁材料のひとつで粒子が細かく、光沢があってとても美しい仕上がりになります。
古くはお城の外壁にも使われています。
その他にも土蔵の壁や寺院などでも使われており、そのなめらかな仕上がりはとても気品があります。
また、「あまりにも白いお城」として有名になった姫路城の外壁、外装材も漆喰で塗られています。
一般的によく使われている壁紙は、誰が施工しても同じように貼れるようになっています。
けれども、漆喰は左官職人さんの力加減や塗り方によってまったく違う表情に仕上がります。
漆喰は、ひとつとして同じものができないといわれるほど奥の深い壁材なのです。
外壁材としての「漆喰」
前述の通り、外壁材としても漆喰が使われています。
最も有名な外壁・漆喰が姫路城です。国宝ですね。
また、上に掲載している画像では「焼杉+漆喰」の外壁仕上げにした写真になります。
どちらも、古くから日本で使われてきた自然素材の外壁材になります。
風合いがいいですね。
また、外壁材として、左官塗り壁の漆喰と似たような素材に「そとん壁」というものがあります。
これは素材が「シラス(火山灰)」になっています。
関連している話なので、別記事にまとめています。ご興味ある方はご覧ください。
漆喰のメリット
漆喰は健康的な建築資材として注目されていて、シックハウス症候群など健康面を特に気にする方から漆喰の塗り壁にしたいという方が増えています。
そこでここからは、漆喰にはどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
見た目がいい。きれい
漆喰に使われている消石灰は非常に粒子が細かく、なめらかに仕上がりますのでとても見た目がきれいで美しいのが特徴です。
見た目を鏡のように光沢を出し、フラットに仕上げる「磨き上げ」という塗り方は、熟練の左官職人さんの為せる技です。
最近では、漆喰のなめらかさを活かしつつ、凹凸感を楽しむヨーロッパ調のラフな仕上げが好まれています。
湿気を調整してくれる(調湿効果)
漆喰には、部屋の湿度を調整してくれる機能があります。
一般的な住宅で多く使われているビニールクロスの約10倍以上も湿気を吸湿する性質があるといわれています。
また、部屋が乾燥すると、部屋に湿気を放出する作用もありますので、お部屋の湿度が一定に保たれ快適な空間を作り出します。
特に日本は梅雨の時期があり雨の降りやすい国ですので、漆喰を使用しているお部屋は吸湿作用がありとても居心地よく過ごせます。
壁のビニールクロスを漆喰に替えると、漆喰の調湿効果によってカビの発生を抑制するといわれています。
自然素材
新築やリフォームの際に建材から放出されるホルムアルデヒドは、頭痛を感じたり、目や喉に痛みを感じたりするだけではなく、重症になると命に関わる喘息などを引き起こす場合があります。それらの症状はシックハウス症候群と呼ばれています。
- 関連:シックハウス症候群とは?
特に壁は面積が広いためビニールクロスがたくさん必要になり、また糊にも化学物質を含んでおり、ビニールクロスを貼るために多く消費します。
人によっては化学物質に反応しにくい方もいらっしゃいますが、敏感な方や小さなお子さんがいらっしゃるご家庭ではビニールクロスを避けて漆喰の塗り壁にする人が増えてきました。
漆喰の原料は、先ほどお伝えしたとおり自然素材であるサンゴ礁からできているため、人に優しく、シックハウス症候群の原因となる化学物質を放出しません。
さらに、漆喰は部屋の中に放出されているホルムアルデヒドを吸着し、分解までおこなう性能があります。
漆喰のデメリット
調湿作用があり自然素材で人に優しい漆喰ですが、実はデメリットも存在します。
お金がかかる。手間・時間がかかる
ビニールクロスは、それ自体も貼り付けに必要な糊も化学合成で作られたものですし、また、簡単に施工もでき、安価です。
そのうえ、ある程度の知識と道具があればDIYでもビニールクロスを貼れるほど簡単に施工できます。
けれども漆喰は自然素材のため、ビニールクロスと比較すると高額です。
さらに漆喰は、左官職人でさえコテの動きひとつでまったく違った表情になるなど、均一に仕上げるのが難しいものです。
また、漆喰は、施工当初は強いアルカリ性を持っていますので、石膏ボードに直接塗ってしまうと石膏ボードが傷んでしまいます。
そのため、漆喰を塗る前には必ず下地処理を施すのです。
一方のビニールクロスは下処理がなくてもそのまま石膏ボードに貼れるため、漆喰との手間や時間を比較するとその差は歴然です。
そのうえ、糊を塗り一気に壁に貼り付けて仕上げるビニールクロスとは違い、漆喰はコテでていねいに仕上げていきますので、非常に手間と時間がかかってしまうのも漆喰のデメリットといえるでしょう。
ひび割れ(クラック)が入る可能性がある
漆喰は消石灰に「スサ」と呼ばれる繊維質の植物を入れ、糊を加えたもので施工します。
漆喰が呼吸をしているといわれるほど、部屋の湿気を吸ったり吐いたりしています。
そのため、漆喰を壁に塗った際はキレイに仕上がっていても、しばらくするとひび割れが入ることがあります。
また、自然素材の家は柱や梁に使われている木が乾燥することで、漆喰にひび割れが入ることもあります。
ひび割れを見つけてしまうと「家は大丈夫?」と心配になりますが、構造的にはまったく心配ありません。