- 「そとん壁って、どんな外壁材ですか?」
- 「住宅建築の本で、そとん壁という素材を知ったのですが、どういう素材?」
- 「外壁で塗り壁でメンテナンスが少なくてすむそうですね。そとん壁って。詳しく知りたいです」
この記事ではこのような疑問にお答えします。
ここでは、でんホームがよく使う外壁材である「そとん壁」についてお話していきたいと思います。
目次
「そとん壁」って何?長寿命な外壁材
そとん壁は「シラス」でできている素材です。
シラスとは「シラス台地」のシラスで、マグマが岩石となる前に粉末になった物質です。鹿児島・宮崎の南九州が産地です。
小学校、もしくは中学校の地理の授業に出てくるような素材です。
シラス台地は、簡単にいうと、火山灰が滞積したようなところになります。なので、基本的には無機質です。そのため、稲作には向かない土地で、育てられる作物が少なく、芋ぐらいでしょうか?鹿児島の芋は有名ですね。ということで、そういうシラスという素材を建築の建材にしたのがそとん壁になります。
正式名称は「スーパー白洲そとん壁W」(高千穂シラス)です。
でんホームの上位グレードの標準仕様の外壁が「そとん壁」です。
そとん壁の特長・ポイント
- 100%自然素材なのに完全防水。シラスの特性を活かした二層構造で雨水の浸入をシャットアウト!!
- 厳しい自然環境にも劣化しない高耐久性。退色・劣化がおきにくいから、建物の維持管理が軽減できます。
- 本物ならではの際立つ質感。他の素材では決して真似のできない生命力溢れるデザイン性。
- 下塗り材でしっかり防水しながら上塗り材がたっぷり保水。
- スーパー白洲そとん壁Wは外壁に打ち水をすれば、建物内外の温度上昇を抑制。
サイディングなど、外壁材のなかでの「そとん壁」の位置づけ
日本の木造住宅のなかで、圧倒的なシェアを持つのが「窯業系サイディング」です。
ざっくりシェアは80%といったところです。サイディングはセメント成形して焼き固めたものに塗装をしたものになります。
また、ほかにはガルバリウム鋼板の外壁があります。これも数パーセントですがシェアがあります。
残りのごくわずかな割合で、杉板のような木質系外壁材や「そとん壁」のような左官仕上げによるセメント系外壁材になります。左官屋さんが工事をして行きます。
ですから、かなりマイナーな外壁材の位置づけになります。
「そとん壁」の色はどんな感じ?
そとん壁の色で、でんホームとして実績があるものは「白(W-121)」だけです。モデルハウスも白で、ご採用も白ばかりなので、必然的に安心感で白になります。
メーカーの高千穂シラスが用意しているカラーバリエーションは全9色。茶色っぽいものから、よりグレーがかった色、黄色っぽい色などなどあります。
「そとん壁」は汚れる?メンテナンスは?
そとん壁は見た目の美しさのみならず、機能性も優れています。
厳しい環境でも劣化しない高耐久性を持ち、かつ、退色や劣化がありません。
ですから、塗り替えや張り替えなどのメンテナンスは不要です。
サイディングの場合、メンテナンスは必要
一般的には外壁材として「サイディング」が使われます。サイディングは模様を印刷していますので、退色や劣化は否めません。
ですので、大体10年程度で塗り替えが必要になります。
見た目は悪くても、、、と思われる方でも、サイディング同士の継ぎ目をコーキングというプラスチックで充填します。
そのコーキングがやはり10年程度で劣化してしまって、すべて撤去して打ち替えしないといけないです。そういうわけで、サイディングはメンテナンスをきちんとするような外壁材と言えます。
それで、サイディングの外壁塗装は実行するのに、外周部に足場を立てたりする必要があるので結構なコストがかかります。
30坪ちょっとの住宅で100万円はするでしょうか。
10年に一度なので、30年間で3回、300万円はかかる計算です。
たしかに初期費用としましては、そとん壁のほうが高いのですが、トータル30年間でランニングコストまで計算すると、そとん壁のほうが安いのではないか、とも思えます。
「そとん壁」は汚れるか?
そとん壁は基本的にはそこまで汚れません。
そとん壁のシラスは無機質なので、劣化やカビの繁殖を抑制します。
樹脂とは違って、基本的にカビが繁殖することはなく、また静電気等による汚れの吸着現象も発生しません。もちろん、外から飛来する有機質がつくとカビがはえます。
でんホームの最初のモデルハウスは築8年経ちますが、当初の美しさのまま維持しています。
そとん壁が汚れる要因としましては、やはりキッチンの排気部分からの排煙等での汚れ。これはどの外壁でも同じですが、食べ物を焼いたり、油で揚げたりしますと、どうしても汚れる空気が出ます。
他には排気ガスや粉塵をもらって、そこに汚れが付着するパターンです。
もうひとつが、常時湿気を持った状態だとコケが生えます。
これらの対処法としましては、高圧洗浄になります。他にも色々と対処法はありますが・・・
それで、汚れが付着したら、すぐに対処して、きれいにするのが吉です。汚れがずっと付着していると、汚れが紫外線で焼き付いてしまうそうなのです。
ですので、すぐに対処していない汚れが焼き付いて強い汚れになるリスクはあります。
そうなる前に洗浄剤を使ってカビをなくして、高圧洗浄するというところがポイントになります。
「そとん壁」のメンテナンスはどうか?
そとん壁自体はそれなりに厳しい環境でも劣化しない高耐久性を持っています。また、退色や劣化がありません。
そのため、塗り替えや張替といったメンテナンスは不要です。ただ、そとん壁に付着した汚れを洗浄したり、何かの付着を取り除くといったメンテナンスは必要なように思います。
そとん壁以外にも、でんホームでは木部が外に出ていたり、木製サッシをつかったりしています。
そういう部分のメンテナンスは必要ですので、その流れでメンテナンスされると、より美しい状態を維持できるのではないかと思います。
そとん壁のメリット
そとん壁はメリットが多いです。初期費用ももちろん高額になるのですが、それ以上にメリットも多いです。ここでは、そとん壁のメリットを具体的に解説していきます。
自然素材である
そとん壁のメリットとして、まず自然素材であるということが一つあげられます。
100%自然素材で出来ていますので、自然素材ならではの質感や見た目、あるいは、素材感や手触り感が非常に良いものではないかと思います。
素材としては前述の通り「シラス」であり、火山灰になります。
耐久性が高い
それから、耐久性が非常に高いです。
先ほど、素材がシラスであるというお話をしましたが、このシラス自体が無機質ですから、それそのものでは劣化しないような素材となります。
外壁というのは、常に日光があたります。雨も降ります。台風も来ます。
それに、暑い寒いもあって、非常に過酷な環境に置かれるものです。
その中で、耐久性が非常に高いというのは、そとん壁の良いところの一つかなと思います。紫外線や雨風にさらされても劣化することが少ないですので、そのもの自体は10年たっても20年たっても変わらないよということなんですね。
防水性がある
それから、防水性があります。
「そとん壁です」と言うと、一般の方は「水が染み込んだりしないんですか?」と言われることもあるんですけれども、基本的に防水性能のある素材になりますので、その辺は安心出来るかなと思います。
ここで申し上げておきたいのですが、サイディングよりも防水性が高いです。サイディングはセメント成形品ですから、防水性は多少は劣ります。
汚れにくい
汚れやすさについても、先ほど述べておりますが、そとん壁は汚れにくいです。
無機質ですので、そのもの自体は劣化せず、汚れにくいというところが特徴と言えます。ただし、そのそとん壁に付いたものが劣化したり、さらに、そこにコケやカビが生えることはあります。
特に軒が短かったり、水切りという部分がしっかりしていなかったがために、大気中のダスト等が外壁にくっついて劣化し、色が付いてしまっているようなところは多いです。よく10年から15年たったそとん壁で、結構雨だれが見えているようなところもありますよね。ですので、しっかりと洗浄をした方が綺麗さは保てると思います。
メンテナンスコストが比較的安価ですむ
前述の通り、メンテナンス性が高いので、メンテナンスコストが比較的に安価ですみます。
まず、コーキングが不要なのでコーキング打ち替えが必要なくなるということで安いです。加えて、退色(色褪せ)しないので、再塗装ということが不要です。
また、外壁洗浄も基本的には家庭用のケルヒャーなどを使用した高圧洗浄ですし、洗浄剤+高圧洗浄でカビ系の汚れもきれいになります(実際にやったことがあります)。
そとん壁のデメリット
そとん壁にもデメリットがいくつかあります。ここでは具体的に解説していきます。
価格が高い
次に、そとん壁のデメリットですが、まず一つは、価格がすごく高いです。
それで、価格が高いということについては、素材そのものも非常に高価ではあるのですが、施工にとても手間が掛かるので、そこの部分が高くなる理由の一つです。
外壁の断面図を見てみましょう。
まず柱があって、耐力面材があって、防水シートがあって、それから通気層があります。ここまでは、どの外壁材もだいたい一緒です。
で、ここから先が、外壁材ごとの違いになります。
そとん壁の場合は、その上にまず木摺りと呼ばれるバイタ、厚さ12mmぐらいの木材を貼っていきます。ここまでが大工さんの仕事です。
ですので、そこからあとが左官屋さんの仕事で、バイタの上に高千穂シラスさんの専用防水シートを貼って、その上に金網を打ち付けていきます。ラスと呼ばれる網の資材です。
そして、その上にモルタルを塗っていきます。これが、止水性のある防水モルタルになります。
それで、そのあとにやっとそとん壁が塗られるということになるんです。
ですから、そとん壁を塗る前に、先の防水モルタルをしっかりと乾かさなければいけません。そのため、最低でも3日以上、時期によっては10日から2週間おくこともあります。ここまでしっかりと乾かしてから表面材を塗っていくという工程が必要になりますので、手間が掛かる形になるんですね。
しかも、それで終わりではなく、実はもう一個、そとん壁を塗ったあとに仕上げをしていくことになります。
そとん壁の仕上げにはいろいろな種類がありますが、うちでよく使うのはかき落としという仕上げです。その他にも、たとえばスチロゴテ仕上げや一条波・三条波、タガネ削りなど、いろいろな左官仕上げがあります。ただ、いずれも同じような表面材を仕上げていく工程で、左官屋さんがやっていく工程です。
こういうふうに沢山の工程を経て外壁材がつくられていきますので、当然、人件費や養生材の費用が掛かってきます。そのため、価格としては高めの壁になる訳です。
ひび割れリスクがある
そとん壁は左官塗り壁のカテゴリになります。
セメントみたいなものを塗っているわけです。
そういうわけで、地震などによってヒビ割れするリスクはあります。
ただ、実際にはヒビ割れ(クラック)を防ぐような下処理をしますので、リスクは低いです。
実際、熊本を震源地とした震災の際、福岡県の南のほうであります久留米市の弊社施工物件では、相当な地震の揺れがあったにもかかわらず、クラックは発生していませんでした。
ポロポロと粉が落ちる
そとん壁の「かき落とし」仕上げというものを標準にしています。それでシラスが無機質ですから、表面がポロポロと落ちるのです。
あくまで表面だけですので、モノとして問題があるわけではないのですが、デメリットではあります。
回避できないですので、ご理解いただける方だけになってしまうのは仕方ないように思います。
そとん壁の工場視察。どう作られているのか?汚れはどうか?
これまで、そとん壁について詳しく解説してきましたが、実際にどういったところで作られているのかを実際に視察に行ってきました。
そとん壁の生産工程は「原料のシラスの採掘」「シラスの乾燥」「シラスの加工」の大きく3工程になります。どれも、ハイテクをつかったものではなく、どちらかというとローテクで、地元の人たちが一生懸命に仕事されている印象を受けました。そういう素材になります。
シラスの採掘場(原料の産地)
ちょっとした山を切り崩す、みたいな印象を受けるのがシラスの採掘場(原料の産地)です。
エリア的に全体的にシラス(火山灰)が積み上がった地層がありますから、それらを崩して原料にします。
乾燥場(採掘したシラスを乾燥させる場所)
次は乾燥場(採掘したシラスを乾燥させる場所)です。
採掘したシラスは湿気をおびているので、それをきちんと乾燥させて原料としてきちんとするイメージの工程です。ビニールハウスのなかで、均しながら、乾燥させていきます。音がうるさかったです。
材料加工場(シラスやその他の鉱物を混ぜて製品にする場所)
最後が材料加工場(シラスやその他の鉱物を混ぜて製品にする場所)です。メーカーの高千穂シラスは製品として「そとん壁」だけではなく、室内壁用の「中霧島壁」をつくっていたりするので、製品によって最終的な工場が異なります。今回はどちらも視察させていただきました。
地元の農家さんが原料のシラスやそのほかの鉱物などをかくはん機で混ぜて袋詰めする工程です。
最後に製品に
袋詰めした後に、最後に封をして製品になります。
これを集めて、日本全国各地の建築現場に外壁材そとん壁として、出荷されることになります。
動画で、そとん壁の生産工場を見てみる
そとん壁の評判は?
そとん壁の評判についてなのですが、でんホームでの評判は上々です。
初期投資が高いという点はもちろんございますので、完璧というわけにはいきません。
ただ、見た目の美しさや耐久性、メンテナンス、汚れ等を加味しますと、なかなか素晴らしい外壁材ではないかと思います。
そとん壁のまとめ
以上のようなことが、そとん壁の詳細になります。
いろいろな情報を知った上で選んでいただきたいんですけれども、そとん壁は継ぎ目のない自然素材が非常に上品に見えます。ですので、そういう外観がお好きな方には、とても合致した素材になると思います。
プラス、耐久性と耐候性も非常に高いので、メンテナンスコストが掛かりません。ただ、初期費用が非常に高額なので、その辺りでいろいろ考えられたら良いかと思います。
私(藤本)としては、なるべくコンパクトに家を建てて、しっかりと使うというのが結構お勧めです。
ということで、私の自宅でも、そとん壁を採用しています。
何故採用したかというと、自然素材が好きだからです。それで、木製サッシが好きで、その木製サッシによく合う外壁ということも含め、いろいろ吟味した結果、このそとん壁を使うことにしました。
あと、先ほどお話ししたような耐久性・耐候性が高いというメリットですね。メンテナンスコストが後々一杯掛かってくるのは嫌だけれども、綺麗な状態をずっと保ちたいということもありました。
それから、素材感でいうと、光が当たっているところと当たっていないところの色の変化も面白さですね。天候や季節によっても色の見え方が違います。うちはW-121という白のそとん壁を使っているのですが、雨が降ったあとには少しグリーンみたいに見えますし、日がすごく当たっているときには真っ白に見えます。そういう日々の変化、季節の移り変わりで少し色味が変わったり、印象が変わるのも、外壁材としてはすごく素敵なところだと思いました。
ただ、一番のネックはやはり価格ですね。どうしても値段が高いので、すごく躊躇はしてしまいます。でも、長い目で見ると、メンテナンスコストが抑えられますから、好きなものを使いたいということで採用しました。
ということで、コンパクトに設計し、使い勝手が良く、コストを押さえ、自分がお金を掛けたいところに使いたい素材を使うという家づくりが私はお勧めです。
【動画で解説】そとん壁のメリットとデメリット
外壁材についての関連する記事
そとん壁以外の外壁材について、関連する記事をご紹介します。
サイディング
日本で最も普及している外壁材は「サイディング」になります。
ガルバリウム鋼板外壁
最近、増えてきている外壁材が「ガルバリウム鋼板外壁」になります。耐久性・耐候性やデザイン性が高く、メンテナンスコストも比較的安価にすむことから、初期費用は多少高くなっても採用される人が多くなってきています。
漆喰の外壁
そとん壁以外の左官さんによる塗り壁外壁としてメジャーなものが「漆喰外壁」になります。