今回は長崎を拠点とされている住宅会社・工務店「フルマークハウス」さんのモデルハウスを取材・見学させていただきました。
このフルマークハウスさんのモデルハウス「諫早の家」は有名な建築家の伊礼智さんが設計された住宅になります。長崎エリアで伊礼智さん設計の住宅はここだけなのではないでしょうか。
また、お庭も有名な造園家の荻野寿也さんに依頼されて、美しい外構をつくられていらっしゃいます。
目次
フルマークハウスさんとの出会い
自然素材をふんだんに使った家づくりで、かつデザイン的にも美しい住宅を建築する地場工務店のことを「アーキテクトビルダー」と呼ぶそうです。
私ども、でんホーム株式会社も「アーキテクトビルダー」と呼ばれるカテゴリに属したいと思っていますが、その「アーキテクトビルダー」の草分けというか、有名な工務店さんに静岡県浜松市にある「扇建築工房」さんがいらっしゃいます。
その「扇建築工房」さんつながりで、ご縁をいただきました。
なかなか九州で、そのような活動をされている方は少ないので、同じ九州ということで、意気投合させていただきまして、訪問させていただきました。ありがとうございます。
フルマークハウスさんは、どんな住宅会社・工務店?
フルマークハウスさんは長崎県島原市に本社を置く、株式会社吉田建設工業の住宅ブランドです。
長崎で1977年に創業と40年数年の実績をお持ちで、長年地元長崎で建設の仕事をされていらっしゃいます。
また、「暮らし真ん中 家づくり」というコンセプトのもと、家だけでなく、「暮らし」が中心となるような家づくりをご提案されています。自然素材を使った木の家を、品よく使った家づくりをされています。
フルマークハウスさんの考え、想い、特徴や強みなどについては、対談記事がございますので、そちらをご覧ください。
伊礼智さんの設計がやはりレベル高い
前述した通り、フルマークハウスさんのモデルハウス「諫早の家」は有名な建築家の伊礼智さんが設計された住宅になります。伊礼智さんは住宅作家として有名で、今をときめく売れっ子建築家です。長崎エリアで伊礼智さん設計の住宅はここだけなのではないでしょうか。
僕は伊礼智さん設計の住宅に数軒、お邪魔したことがあるのですが、実際に伊礼智さんの著書でかかれているような「小さくても、美しい」家づくりをされていらっしゃるな、と感じます。さすが、売れっ子建築家だけあって、レベルが高いです。
伊礼智さん設計。どこも絵になる。
基本的に、家のどこを撮っても絵になりますね。
絵になる、というよりも、絵になるように建築されている、というべきだと思います。細かい部分、ディテールと呼ばれるのですが、そういう部分がきちんと寸法(何ミリなど)の指定がされていて、美しく見えるように指示されて、設計されています。
伊礼智氏設計「諫早の家」モデルハウスのプラン設定
設計:田口による設計についての感想。
伊礼智氏設計「諫早の家」モデルハウスは長崎県諫早市にある【いさはや西部台】という住宅地の一角にありました。長い坂を下っていくと、高台に見えるひと際目を引く特徴的な建物。
異質で美しい佇まいは、そこの空間だけ時間が止まったかのようです。その日は梅雨時にも関わらず、絶好のお天気日和でした。
こちらのモデルハウスは夫婦2名、子供2名と考えてのプラン設定。1階に寝室、子供部屋が2部屋と、トイレと浴室。2階はLDKと畳スペース、洗濯室になっていました。
「4人家族のプラン設定だけど、家族は4人でも5人でもいい。家族が増えたら、1階の寝室を子供部屋にして、2階の畳スペースを寝室代わりにしてもいいし、どこにでもどうにでもなると思っています」
と、笑って答えるのはフルマークハウス取締役 吉田安範さん。
ゆったりと計画出来るであろう敷地なのですが、何故か2階にリビングがあります。福岡市やその近郊では、土地に余裕がなく、2階にしかリビングが作れないこともあります。
では、なぜ2階リビングなのか?
実際、この辺りではとても珍しいそうです。
吉田さんはこう語ります。
「子供がいるとかそう言うのは抜きにして、2階リビング面白いな、と」
設計をされた伊礼智さんにも設計をお願いする際に、2階リビングにして欲しいとお願いしたからだそうです。
2階リビングは動線が長くなる分、敬遠される方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、見学して気づいたのは、家の中心に階段があることで、動線の問題が解消されていること。
大谷石の床仕上げが意味するところ・・・
床の仕上にもこだわりを感じます。
家の中に入ると、外とのアプローチから張られている大谷石(おおやいし)が、玄関から1階ホール、更に2階に続く階段下まで繋がっています。
内装の床仕上を外と繋げることで、動線の長さを感じずに2階のキッチンまで行くことが出来ました。1階ホールに大谷石を選んだ理由は、なかなか家の中に石を張ることはないと思うので挑戦したかったそう。
土地選びから、伊礼智さんとコラボ
【諫早の家モデルハウス】は、土地から伊礼智さんに関わって頂いているそうです。
本当は違う土地を購入していたそうですが、現地に来てもらった際に、ここがいいんじゃないか?ここなら目の前に住宅も建たないし、2階リビングにするなら、景色も抜けていて絶対いい。
その助言を受けて、急遽現在の場所に変更し、伊礼智さんに提案して貰ったうちの一つが、現モデルハウスとして完成しました。
外から眺めると、伊礼色と言われる「そとん壁」に、大きな木製サッシが存在感を醸し出しています。
外から照明が見えるほどの大きな木製サッシは、中に入ると一気に意味を持ちます。室内には照明は少なく、外の明かりが室内に差し込んでいました。
目線が自然と外に抜けて、遠くにある山が見えました。土地の持つポテンシャルを最大限に活かし、2階リビングならではの眺望の美しさをコンセプトに、この家は作られたそうです。
フルマークハウスさんは、こういった自然素材を多く使った経年劣化ではなく、経年美化していくような住まいを長崎に広めていきたい。とも話されていました。
伊礼智さんのこだわりが伝わる設計
伊礼智さんの設計される家は天井高さが低く、今回のモデルハウスも2.1mとなっています。
遠くから隣のお宅と見比べると、明らかに小さい。
ですが、それよりも外から見て一番気になったことがありました。
けらば先から、樋が出てる・・?
勿論、意味がない訳ではなく、天井高さとも関連する意味がありました。
天井高さを低くすることで、横に広がる建物のプロポーションを強調する狙いがあるそうです。樋を横に長めに取っているのは、そのプロポーションを更に強調する為だけで、機能的な要素は何もないのだそう。
【諫早の家モデルハウス】は遠くから眺めるだけではなく、下から眺める姿も素晴らしいです。
あとで図面を拝見して気づきましたが、小さいサッシ下でも、ピーラー(年輪の密な上級材)を使用されています。異質で美しいと感じた佇まいは、細部まで拘ったデザインが作りだしていることを思い知らされました。
2階リビング以外のプランの見どころに、寝室に隣接したお風呂があります。前述したように、1階に子供室と寝室、お風呂があります。こうしたことで、2階リビングは広く取れるし、建築家として言えば、美しい建物が出来る。
伊礼智さんがおっしゃっていたそうです。
私自身は母であり主婦であるので、つい女性目線から言えば敬遠されませんか?とぶつけてみました。
お客様自身が美しいデザインを求めて来られるので逆に喜ばれないとおっしゃいました。
先程の2階リビングの動線にしても、プラン次第で解消出来ると感じたように、そういったことを言わせないだけの設計力も必要なのだな、と痛感します。
1階の寝室の床の高さが下がっているのも面白いと思いました。
伊礼智さん自身が、ここは違う用途の部屋という場合、部屋自体を切り離して考えるという意味で、こういう設計をされるそうです。
本当に勉強になります。今後のプランにも活かしていけるように日々精進していこうと思います。
フルマークハウスさんでは、女性の方も活躍されているのですが、東京に出向き、伊礼さんと打合せをされたりもされていたそうで、とても羨ましい限りです。
モデルハウスのお気に入りのポイントを伺ってみると、大きな木製サッシ傍の【ダイニングチェアに座って見る景色】だそうです。
私も座って見ましたが、お天気が良かったこともあって、山の緑、空の青が混じり合って、素晴らしい景色になっていました。
窓が床から70㎝の高さで取付けてあるので、ちょうど椅子に座った時に、目線がサッシと同じ高さになります。
緻密な設計が行われていると感じます。
少し離れて見てみると、窓から眺める山の小景は、1枚の絵画のように美しく目を奪われました。
ここの場所なら、リビングも見渡せるし、近くの収納にすべて手が届く。何より外の景色が望めるので落ち着くと話されていました。照明も少ないけれど、それがまた夜になると、更に落ち着く空間を演出するのだそうです。
自然素材は、やはり人の心を癒す空間を作り出すのだと感じました。
そんな中にも、伊礼智さんの拘りのデザインが散りばめられていました。外観のプロポーションの為に伸ばした樋。
上記では特筆していませんが、階段笠木も独特で、下から上を望んだ時の美しさを追求した納まりになっていました。
随所に見受けられる芸術に触れ、伊礼智さん、フルマークハウスさんの熱意を存分に味わえる、至福の時間となりました。
伊礼色と言われる、伊礼智さんの特注色。外観、内観共、落ち着いた色合い。
中に入るとその空気の清涼さに驚き、1階ホールにある大きな木製サッシは、まだ外にいるかのように錯覚させてくれます。家の中ではしっとりと落ち着いた空間が広がり、自然の中にいるような気にさせてくれました。
床・壁・天井、キッチンや浴室はどんなもの?
設計の中川路の感想。
「”諫早の家”の仕上げのなかで、一番のこだわりはどこですか?」
「”諫早の家”の仕上げのなかで、一番のこだわりはどこですか?」
吉田安範氏(以下:吉田):『木を上品に使う』というところですね。
自然素材・本物の仕様にこだわり、工業製品や既製品をなるべく使わないという方針でやっています。長崎ではまだ、そういう自然素材住宅というような家づくりが少ないのです。
ですから、このような自然素材を活かした住宅を長崎に広めていきたいと考えています。
今回のモデルハウスで、伊礼智さんに設計を頼むことで、そのテイストの家づくりをしっかりと学ぶことができました。細部までの指示で大工さんや現場は困惑することもありましたが、やりがいを感じることが多かったですね。
「”諫早の家”の床・壁・天井の仕上げと、そのこだわりやポイントは?」
「”諫早の家”の床・壁・天井の仕上げと、そのこだわりやポイントは?」
吉田:まず、床の仕上げで特徴的なものは外部のアプローチから、玄関、廊下まで一貫して通した「大谷石(おおやいし)」の仕上げです。
この家全体のフローリングは基本を米松の無垢フローリングにしています。洗面、トイレ、ランドリールームはコルク。寝室はタイルカーペットと、機能性で切り替えていたりしています。
内壁については基本はシラス塗り壁になります。具体的には薩摩中霧島壁(さつまなかぎりしまかべ)になりまして、外壁のそとん壁と同じメーカーがつくっている素材になります。
天井はリビングの天井だけ、内壁と同じ素材である薩摩中霧島壁(シラス塗り壁)です。それ以外は米松のピーラー材(無垢材)を貼っています。
細かいところになりますが、収納や扉の引手の部分は木の色が濃いチークで制作しています。手垢などで汚れても目立たないようになっています。
「”諫早の家”のキッチンのこだわりはいかがでしょうか?」
「”諫早の家”のキッチンのこだわりはいかがでしょうか?」
吉田:キッチンは、コンパクトなL型キッチンで、間取りレイアウトが独特で2WAYの回遊できる間取りになっています。片方かリビングへ片方はダイニングへと回遊できます。
最近人気の対面キッチンに比べても、建具のないキッチンからは、リビングを見通せることができる開放感もあり、それでいて、ほどよく雑多になりがちのキッチンを見せないようにもできています。
「”諫早の家”の造作キッチンの素材はどのようなものでしょうか?」
「”諫早の家”の造作キッチンの素材はどのようなものでしょうか?」
吉田:天板はステンレスです。収納扉はシナベニヤを使っています。
壁はタイルで、コンロ下にすっぽりと納まる70cm幅ほどのワゴン(キャスター付)が格納されていまして、大きな鍋類も収納できるようになっています。ワゴンは、ダイニングへの食器などの配膳にも役立つので便利です。
キッチン背面には家電と食器収納棚があります。幅は90cmほどの床から天井までの造作収納にしています。
「”諫早の家”の浴室はハーフユニットバスのヒノキのお風呂なんですね?」
「”諫早の家”の浴室はハーフユニットバスのヒノキのお風呂なんですね?」
吉田:そうなんです。
浴室はLIXILのハーフユニットバスを使っています。ハーフユニットバスは浴槽から下半分だけのユニットになっていて、浴槽、床、腰高までの壁が一体になっているものです。
浴槽より上の壁、天井の仕上げは自由に選ぶことができるというのがウリです。
この”諫早の家”では桧(ヒノキ)の無垢板を貼って仕上げています。ちなみにこのLIXILのハーフユニットバスの開発にはこの”諫早の家”の設計をしていただいた伊礼智さんが携わり、2016年より販売開始されているものです。
「外に出かけたくなくなる家」
スタッフの金沢さんと津田さんにお尋ねしました。
「ひとことで言うとどんな家ですか?」
同じ答えが返ってきました。
「外に出かけたくなくなる家」
スタッフの津田さんはこう語ってくれます。
「夕方のやや暗がりになり始めた頃に、リビングの障子や建物から外にこぼれる灯りとともに見る外観が好きなんです」
リビングとダイニングにある大きな窓は、その名のとおり、ピクチャーウィンドウとなり窓から見える借景は、風景画のようです。窓の下の台は奥行きがあり、ちょっとしたカウンターのようです。
造作家具や素材が高級!!
モデルハウス内に置かれている家具も多くが、オリジナルの造作家具。
伊礼智さん設計の造作家具ばかりだそうです。
造作家具は安くつく、、、ように思いますか?
日本で、日本人が作っている以上、安くはないです。
加えて、造作家具に使われている素材が高級。
僕の大好きな素材のひとつである「ミャンマー・チーク」がなかなかふんだんに使われていまして、うらやましい。「ミャンマー・チーク」はそもそも採れる量が限られていますので、希少性が非常に高く、それに応じて金額も非常に高い素材です。
ヴィンテージものの北欧家具などにミャンマー・チークはよく使われています。かつては、もっと良質なチークの木が多く伐採されていたからです。今はそもそもモノがないという状態ですね。
そういう細かい素材なども高級なんですが、外壁材の「そとん壁」、木製サッシ「プロファイルウインドウ」、床の赤松フローリング、内壁の「中霧島壁」といったメインの素材もまた、とっても高級。
73坪の敷地に32坪の2階建て、というごく一般的に見えるスペックですが、同業プロ目線で見ると、素晴らしくこだわって、素晴らしく気合いが入って、素晴らしくお金がかかった、いい家だな、と感じます。
荻野寿也さん(有名な造園家)に依頼した外構
これも前述していますが、お庭も有名な造園家の荻野寿也さんに依頼されて、美しい外構をつくられていらっしゃいます。
設計の伊礼智さんと造園の荻野寿也さんのタッグは有名で、何件も手がけられているそうです。
住宅建築と造園・外構は一体になっているにもかかわらず、建築と外構は業種的にはそこまでお互いやりとりしないんですね。
ですから、そもそも密に連携をとって、一体となって住宅建築と外構がなされているというだけでも、とても仕上がりが美しくなることになります。
「今回、外構を荻野寿也さんに依頼されたということですよね。どういった経緯で、どういうお考えで、そこに至ったのでしょうか?」
吉田安範氏・吉田建設工業取締役(以下:吉田):
建物の設計を依頼した、伊礼智さんのご紹介で依頼しました。伊礼智さんと荻野寿也さんはこれまでも多くの物件を一緒につくって来られたそうです。
荻野寿也さんはどういう方?有名な造園家です。
造園をされた荻野寿也さんのプロフィールは「荻野寿也景観設計/荻野建材株式会社 代表取締役」をされていらっしゃいます。
1960年に大阪府生まれ、1989年に家業である荻野建材に入社。同時に緑化部を設立。ゴルフ場改造工事を機に、樹木、芝生を研究されます。独学で造園を学び、1999年に第十回大阪府みどりの景観賞奨励賞を受賞。
2006年、荻野寿也景観設計開設。三井ガーデンホテル京都新町別邸が、第25回日本建築美術工芸協会賞(AACA賞)優秀賞共同受賞。長野県松本市景観賞受賞。
外構全体のコンセプトは?
「外構全体のコンセプトはどのようなものでしょうか?」
吉田:「季節をゆっくり楽しむ」をコンセプトにしています。
例えば前庭には大きめのウッドデッキを配置しています。
ここにちゃぶ台を出して、月をみながら家族でご飯を食べる。ウッドデッキの隣にある、すり鉢にスイカを入れて冷やしておく。
ワイルドストロベリーやブルーベリーなどの果物も植栽しています。このようにして、季節を楽しめるように、窓からも四季を感じれるように設計しています。
駐車場の外構で見どころ、ポイントはどこですか?
「駐車場の外構で見どころ、ポイントはどこですか?」
吉田:3台駐車できる駐車場ですが、玄関アプローチの近くに荻野さんが作ったコンクリートのベンチがあります。ちょっと座れる、ちょっと置ける、このベンチがポイントです。
玄関へのアプローチで見どころ、ポイントはどこですか?
「玄関へのアプローチで見どころ、ポイントはどこですか?」
ここでの主役は大谷石です。栃木から取り寄せました。
運送費も高く、商品代と同じくらいかかりました。玄関へのアプローチから、玄関ホールまで大谷石を使うことで、一体感を出しています。
植栽の種類やポイントをお教えいただけますか?
「植栽の種類やポイントをお教えいただけますか?」
吉田:常緑のものでいえば「イジュ」「スタジイ」。他には「ヤマボウシ」「ヤマザクラ」「コナラ」「アオダモ」ですね。果物も植栽していまして、「ブルーベリー」「レモン」「ワイルドストロベリー」などを植えています。
自然な枝ぶりを感じられるのが、ポイントです。植栽は三角形を意識して作られています。
そうすることで、奥行きが出て、生花のような立体感が出てきます。また勾配や枝ぶり、植栽の方向が違うのを意識してより自然な感じが出るように設計されています。
主庭の見どころ、ポイントはどこですか?
「主庭の見どころ、ポイントはどこですか?」
吉田:沖縄から取り寄せた、花ブロックがポイントです。花ブロックの前に植栽をして、道路と敷地の境界をぼやかしています。そうすることで、余裕のある敷地の使い方となり、上品な印象にしています。
通常のブロックより通気性が高いデザインであり、沖縄出身の伊礼智さんは他物件でも使用している。デザインも多様。
外構全体のなかで、一番のお気に入りポイントはどこですか?
「外構全体のなかで、一番のお気に入りポイントはどこですか?」
吉田:季節を感じれる、大きなウッドデッキです。また、2階から見えるアオダモも気に入っています。
「全部の窓から、庭の緑が見えますよ」
「全部の窓から、庭の緑が見えますよ」
吉田さんが、そう言われたので、1階、2階の全ての部屋を回って、窓から外を見ると、確かに、庭の緑が見えました。
ひとつずつ、違う表情の緑。
居室の窓は木製サッシで、窓の外の景色を優しく切り取ってくれます。贅沢なハーフユニットの浴室からもこじんまりと可愛い裏庭が見えました。
有名な造園家が作る庭はもっと作り込んだ、人工的なイメージを持っていたが、全てが長崎の土地、自然に溶とけ込んだ、昔からそこに当たり前にあるような庭でした。玄関を入ると、大きな窓越しにウッドデッキ、それを囲むように庭が広がります。
2階のリビング、ダイニングからも植栽が見えるように背の高い木々が植わっています。外と内からの見え方を考えると、両方のバランスを取るのがとても難しく感じます。
おそらくそのバランスを上手に、自然にとるのが、荻野さんの技術なのでしょう。
コーディネーターの金澤さんは、「1日2回、庭の苔や植物に水やりをしています」とおっしゃっていました。苔は水分がないと枯れてしまうので、維持が難しいそうです。
「諫早の家」は建築知識ビルダーズ(2018年summer)の表紙を飾っています。
写真を撮影したのは、フルマークハウスの吉田さんです。
フルマークハウス・モデルハウス「諫早の家」のインテリアに注目
これだけの手間と情熱のこもった家のインテリアはどういったこだわりがあるのでしょうか?みていきたいと思います。
小ぶりなヤコブソンランプと窓まわりが美しい
いざ「木の家」へ。
玄関では、小ぶりなヤコブソンランプが出迎えてくれました。
北欧スウェーデンを代表する照明デザイナー、ハンス アウネ ヤコブソン氏がデザインした照明。
吟味され、じっくり自然乾燥させた北欧産のパイン(松)材を薄くスライスし、かませるように組み合わせてつくられたシェードを通して、ほのかな光の温もりが感じられる優しいあかりが特徴。
玄関入って、ホールの正面に大きな木製サッシがあります。
この窓の遮光はどうなっているのかな?と思って、覗いてみました。
すると、木製サッシを邪魔しないように、壁の裏側のボックスにハニカムサームスクリーンが収められていました。
スクリーンをすべて下げてみると、和紙のような風合いで、柔らかい光が差し込んできれいでした。
その他の窓も、スクリーン・ブラインド・建具(障子やガラリ)、洗面所では、ミラーが正面からは、全く見えず、きちんと納まるように窓まわりがデザインされています。
光の採り入れ方や、空調の納まり、傘を入れる小さな収納、キッチンの吊戸棚、トイレの把手の金物等々、ディテールが本当にすばらしいです。
一段低い主寝室の意味とインテリアは?
1階玄関ホールの右側には、他のスペースより一段下がって主寝室があります。
なぜ一段下がっているのか伺うと「この部屋は特別な部屋だよ」という意味をもたせているからとの事。
木製ヘッドボードの無印良品のベッド、造作のサイドチェストの上には、STANDARD TRADEの麻のシェードのスタンド。きれいなパープル色のカーペットが素敵でした。
麻のシェードから、柔らかな光がこぼれるスタンドランプ。サイドテーブルやチェストの上に置けば、周囲をやさしく照らしてくれます。シャフトとベースは真鍮製。使い込むほどに渋い風合いが出てきます。
リビング・ダイニング・キッチンのインテリア
2階は階段を挟んで回遊でき、一つの空間でつながっているリビング・ダイニング・キッチン。
家具選びのポイントを伺うと、手肌に触れて優しいものをセレクトしているそうです。木の家と共に、家具の木も一緒に経年変化していくのが、楽しみな一生ものの椅子たちばかりですね。
ダイニングは直径120cmの丸いテーブル(シキファニチア)にハンス J. ウェグナーの代表作「CH24(Yチェア)」と「CH23」が2脚ずつ。
ルイスポールセン「Toldbod(トルボー)」のペンダントライトが温かく照らしています。
リビングにはゆったりと座れる「CH25」の隣にアルネ・ヤコブセンのスタンドライト「AJ FLOOR」。
イデーのブルーファブリックが素敵なソファの横のリビングボードには、STANDARD TRADEのテーブルスタンド。
薪ストーブの近くに、吉村順三、中村好文、丸谷芳正の3人の協働デザイン「たためる椅子」と吉村順三デザイン・スタンド照明「S7237」。
小さな畳スペースには、イサムノグチの「AKARI」。
スタディコーナーのデスクにはアルヴァ・アアルトの「チェア66」とデスクライト「AJ TABLE」。
素敵な家具の傍に素敵な照明が配されています。
ソファ以外は、自由動かすことができるので、家具も照明もレイアウトを楽しめます。
南側の大きな木製サッシ2枚は、窓枠に腰かけられる高さになっているそうです。
「シーリングライトがないので、夜は暗いのでは?」
シーリングライトがないので、夜はきっと暗いんじゃないのかな?と思って伺うと、日本の住宅のように部屋全体を明るくするために照明器具を配置するのではなく、あかりそのものを楽しむために、必要な所に必要な照明を配置するという北欧のスタイルにしているそうです。
きっと夜は、もっと素敵な雰囲気で、外から見ても、窓に温かさが漂う素敵な家なんだろうなぁと思いました。
そういうわけで、お金がかかっている!
そういうわけで、最終的には最大の見所は「お金がかかっている」というところです。
フルマークハウスさんのモデルハウスということで、一般的な住宅ではなかなか金額的に高くて採用できないやー、という同業プロ目線で思うようなものをふんだんに使っています。
たとえば、天井、軒天(屋根の裏側です)、ドア等の枠などなど、、、すべてピーラー(米松の柾目)という材料を使っています。かつてはピーラーはそれほど高額な材料ではなかったのですが、現在では希少性が高くなりまして、お値段も非常に高い素材になっています。伊礼智さんの設計指示というお話を聞いていますので、あれなんですが、出だしで高級な材料をふんだんに使っているので、お高いですね。
「伊礼智さん設計・荻野寿也さん造園・フルマークハウス施工」フルマークハウスさんモデルハウス「諫早の家」。
いいもの見させていただきました。
フルマークハウス(長崎の工務店)にポリシーや家づくりの姿勢を聞いてみた
そんなフルマークハウスさんのモデルハウスで、でんホーム株式会社社長・藤本香織がフルマークハウス(株式会社吉田建設工業)取締役・吉田安範氏と対談させていただきました。
テーマは「フルマークハウスモデルハウスから考える理想の家づくり」です。