注文建築で家を建てるとき、どのような間取りで家を建てるのか、外壁はどんな素材を使おうかと設計士とワクワクしながら話をしているお客様でも、いざ基礎工事のことになると「あまりわからないから」という理由で関心を示さない人がいらっしゃいます。
たしかに、基礎の見た目はただのコンクリートですし、地味な存在ではあります。けれども家の基礎は単なるコンクリートではなく、この先何十年も大事な家を支える非常に重要な土台となるのです。
そこで今回は、地味な存在の基礎工事に少しでも関心をもっていただくために、基礎工事とはどのようなものなのか、どういった作業をおこなうのかを詳しくお伝えしていこうと思います。
目次
基礎工事とは「住宅(建物)の基礎をつくる工事」のこと
基礎工事とは、住宅(建物)の土台となる工事のことをいいます。
基礎の良し悪しが建物の耐久性を左右するといっても過言ではありません。基礎がしっかりしているからこそ、家は何十年経っても傾くことなく、私たちを雨風から守ってくれるのです。
そんな大切な基礎ですが、工法には大きく分けて「布基礎」と「ベタ基礎」の2つがあり、今の日本の木造住宅建築ではこの2つのどちらかを採用するのが一般的です。このあと詳しくご紹介していきます。
布基礎
布基礎は、建物の柱や壁といった主要構造部分に沿うようにコンクリートを帯状に枠の中に流し込み、立ち上がりを設けた基礎のことをいいます。
布基礎は、昭和初期から木造建築の基礎工法として採用されたのを始めに、これまでの日本家屋を支えてきました。
布基礎は、このあとご紹介するベタ基礎に比べると、使用されるコンクリートや鉄筋の量が少ないため、コストが抑えられるというメリットがあります。
ただ、コンクリートや鉄筋の量が少ないからといって、布基礎の強度が低いというわけではありません。布基礎は、地面に隠れている「根入れ」と呼ばれる基礎の深さがベタ基礎より深くなっていますので、強度的にはどちらとも優劣はないのです。
布基礎の場合、基礎自体はベタ基礎と同じような強度があっても、基礎の立ち上がりに家の荷重が集中するため地盤が軟弱な土地では不同沈下を起こしやすくなります。
また、昔の布基礎は立ち上がりの部分以外は土がそのままの状態だったため、地面からの湿気によるカビや白アリの被害が発生する危険性がありました。
しかし今では、それを防ぐ薄い防湿コンクリートを打設する工法が増えてきました。防湿コンクリートがあるかどうかで家の寿命が違ってきますので、布基礎を採用する際には、防湿コンクリートが施工されるのかどうかを必ずチェックしておきましょう。
ベタ基礎
ベタ基礎は、建物の主要構造部を支えるための立ち上がりと、床一面の床スラブ(鉄筋コンクリート造)で構成されている基礎のことをいいます。
布基礎が地盤によっては不同沈下を起こしやすかったのに対し、ベタ基礎は基礎全体で建物の荷重を支えるため、軟弱な地盤でも不同沈下が起きにくいという特徴があります。
また、床一面がコンクリートで覆われるため、地面からの湿気や白アリ等の侵入を防げますので、建物の品質を長く保つことができます。現在、建築されている住宅の多くはベタ基礎が採用されています。
基礎工事の工程を詳しく解説
建物の基礎「布基礎」と「ベタ基礎」の2つについてご紹介してきました。
ここからは実際の工事現場では、どのような工程で基礎がつくられるのかを、多くの現場で採用されているベタ基礎を例にお伝えしましょう。
地縄を張る(遣り方)
建物が土地のどの部分に建築されるのかがわかるように、基礎の外周に縄やロープを使って印をつける工程です。「遣り方(やりかた)工事」とも呼ばれています。
掘削工事(根切り)
掘削工事(根切り)とは基礎の底面の高さまで、ショベルカーなどの重機で土を掘り出す作業です。
砕石・転圧
砕石・転圧作業とは「砕石」と呼ばれる細かく砕いた石を全体に敷き、ランマーと呼ばれる転圧する機械で地面を固める作業です。
防湿シート・捨てコンクリート
固めた地面の上に、湿度が上がってこないようにする防湿シートを敷きつめたあと、基礎の外周部分に「捨てコン」と呼ばれるコンクリートを流して平らにしておきます。
この捨てコンは基礎の強度を保つためのものではなく、基礎の位置を正確に測るためにおこないます。
配筋工事(鉄筋を組む)
基礎を組む位置が決まったところで、今度は鉄筋を組んでいきます。
型枠組み
コンクリートが漏れ出さないよう、基礎外周の立ち上がり部分に型枠を組んでいきます。
ベース部分のコンクリート打設
床(基礎ベース部分)にコンクリートを打設していきます。
立ち上がり型枠組み
先程のベース部分のコンクリートが乾いたら、基礎の立ち上がり部分の型枠を組みます。
立ち上がりコンクリート打設
基礎立ち上がり部分の型枠にコンクリートを打設する工程です。
型枠バラシ・仕上げ
基礎立ち上がりのコンクリート打設が終われば、コンクリートの強度が出るまで養生します。その後、型枠を外し、仕上げの作業として雑コンと呼ばれる勝手口や土間、給湯器置き場の打設、バリ取りをおこないます。
完成
地縄を張ってから約1ヶ月半ほどでようやく基礎が完成しました。