- 「家づくりで、塗り壁ってよく聞くけど、詳しくはどんな感じ?」
- 「塗り壁のメリット、デメリットについて知りたい」
この記事ではこのような疑問にお答えします。
洋風な住宅が増えている昨今、塗り壁は和風住宅のイメージが強いこともあって、住宅建材として注目されることはありませんでした。しかし、今では自然素材であること、また、風合いや見た目、耐久性や安全性の高い外壁材、内装材としてもふたたび見直されるようになりました。
そこで、この記事では、塗り壁とは何なのか、そしてそのメリット・デメリットについて詳しく解説しています。
目次
塗り壁(左官塗り壁)とは何ですか?
塗り壁とは、下地の上に土などの天然素材・自然素材を塗って仕上げた壁のことをいいます。
塗り壁の素材には、水や土、植物といった自然素材が使われることから、アレルギー症状が出たり化学物質に過敏に反応してしまうリスクを減らしたりという効果があると注目されています。
内装材としての塗り壁
塗り壁を内装材として使う魅力は、天然の素材で健康的であると同時に手仕事の風合い、見た目です。
多くの住宅で内装材として使われているのはビニールクロスです。
ビニールクロスは施工が簡単で工期が短く、安価なうえデザインが豊富という魅力があります。
一方で、ビニールクロスは壁下地に接着剤をべったり塗りつけて接着しますので、化学物質が多く、アレルギーや化学物質過敏症といった症状を発症される方もいらっしゃいます。
一方の塗り壁は、土や水、植物といった天然成分でできており、化学物質が使われていません(多少は入っているものも多いのですが)。
そのため、アレルギーや化学物質過敏症を発症する心配もなく、安心して使える点が優れているといえるでしょう。
また、ニオイを低減したり、部屋の湿度をコントロールしたり、カビやダニの発生を防いだりというメリットがあるなど、塗り壁には多くのメリットがあります。
外装材としての塗り壁
日本では古来より、お城や民家の壁の外壁材には塗り壁が使われてきました。
現在ではサイディングやタイルが主流となっていますが、何層にも重ねて塗り固めていく日本の伝統的な工法として、塗り壁が再度見直されています。
塗り壁はすべて職人さんの手作業によるものですので、デザイン性が高く、タイルとの相性が良いことから、和風建築以外でも洋風建築で広く使われるようになりました。
職人さんの個性とこれまでの経験やコテさばきで、塗り壁のデザインのバリエーションは非常に豊富なため、建主の家へのこだわりを十分に満たしてくれるでしょう。
塗り壁の種類・材料の違い
では、ここからは塗り壁に使われる種類や材料の違いについて見ていくことにしましょう。
漆喰(しっくい)とは?
漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした壁材です。
この消石灰にワラやスサ、のりを加えて水で練ったものを使って塗られたものを漆喰壁といいます。
紫外線による自浄作用があり、強アルカリという性質があるため、北側の壁によく発生する藻がつきにくいというメリットがあります。
色は石灰の色そのままですので、ツルンとした光沢のある白に仕上がります。
珪藻土(けいそうど)とは?
珪藻土とは今からはるか1,000万年前、海や湖に生息していた藻などの植物性プランクトン殻の化石による堆積物のことをいいます。
「珪藻土バスマット」という商品名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
珪藻土は無数の穴が開いていますので、調湿性能が非常に優れていることから水分をグングン吸収するバスマットは急激な人気商品となりました。
他にも珪藻土には脱臭機能があることや、自然素材であることなどから内装材としてよく使われるようになりました。
そとん壁とは?
そとん壁は「シラス」でできている素材です。シラスは「シラス台地」のシラスで、マグマが岩石となる前に粉末になった物質です。鹿児島・宮崎の南九州が産地です。
正式名称は「スーパー白洲そとん壁W」(高千穂シラス)です。
詳細は以下の記事にまとめています。
ジョリパットとは?
ジョリパットとは、1975年からアイカ工業で販売されている塗材のことをいいます。
180種類以上の豊富なカラーから選ぶことができ、コテ、吹付け、ローラーなど様々な施工が可能となっています。
また、ジョリパットは「耐久性」「低汚染性」「不燃性」といった優れた性能があるにもかかわらず、他の塗材の中でも比較的安価なため、塗り壁と言えばジョリパットといわれるほどのシェアがあります。
外装を塗り壁にするメリット
漆喰、珪藻土、そとん壁、ジョリパットと、塗り壁の種類をご紹介してきましたが、今度は外装を塗り壁にするメリットについて解説していきます。
独特の風合い、手仕事の味わいがある
塗り壁は、一見シンプルですが職人のコテさばきやセンスで幾通りにもデザインでき、手仕事の味わいがあるということに尽きます。
また、サイディングやタイルのように均一ではなく、素材の持つ独特の風合いによって様々な表情を魅せてくれます。
継ぎ目がなく、一体で美しい外観になる
塗り壁は、タイルやサイディングのように継ぎ目がありません。
凝ったデザインの家でも、形状に沿ってなめらかに塗り上げることができます。
素材によっては長持ち、省メンテナンスにも
外装に塗り壁を使う際、素材を選ぶことで、高耐久、長持ち、省メンテナンスのものを使うことができます。
サイディングのようにジョイント部分(継ぎ目部分)がないので、コーキングの劣化がないですし、水洗いなどのメンテナンスをすれば、長持ちする素材が多いです。
外装を塗り壁にするデメリット
美しく、独特の風合いがある塗り壁にもデメリットは存在します。
コスト(費用)が高い
外装を塗り壁にするデメリットで最大のものはやはり「価格(コスト)」です。
塗り壁は職人さんの手仕事のため、一般的な外壁材より工期が長引きます。また、工場で均一に作られるサイディングボードなどは量産されるためコスト減となりますが、塗り壁の場合は、職人さんが手仕事で仕上げるため人件費というコストが高くなってしまいます。
素材によっては汚れやすい場合も
塗り壁は、漆喰の場合は前述の通り紫外線による自浄作用があるため汚れが付きにくいというメリットがありますが、それ以外の素材では苔が生えることもあります。
また、経年劣化で色あせがあったり、デザインによってはホコリがたまってしまい汚れが目立ったりするという場合もあります。
内装を塗り壁にするメリット
塗り壁を内装にするメリットについても見ていくことにしましょう。
天然素材・自然素材の材料で健康的
漆喰や珪藻土といった塗材は、天然の素材からできています。
漆喰は消石灰からできていますし、珪藻土はプランクトンの堆積物です。
使われている素材には何ひとつ化学物質が含まれていないため、健康的であるといえるでしょう。
湿気を調整する機能がある
塗り壁には、部屋の湿度を調整する機能があります。
特に珪藻土は調湿機能に優れています。
部屋が乾燥しているときには、素材に含まれている湿気を吐き出し、部屋の湿度が高いときには、湿気を吸収するので、部屋の中はいつでも最適な湿度を保つことができます。
いやなニオイを消臭・吸着する機能がある(ものもある)
塗り壁にはいやなニオイを消臭、吸着する機能があります。
特に漆喰は消臭機能に優れています。漆喰はもともと強アルカリの性質があるため、カビや細菌といったニオイのもとを分解する機能があります。
また、シックハウス症候群の原因といわれているホルムアルデヒドを吸着し分解する機能もあるため、部屋の中は健康的な空気に満ちているのです。
独特の風合い、手仕事の味わいがある
一般的な内装材として使われるビニールクロスには、様々なデザインがありますが、どれも工場で生産された機械的なものばかりです。
しかし、塗り壁は職人の手により、ひとつとして同じ表情を見せない風情ある仕上がりとなります。職人さんのコテさばき刷毛使いで、独特の風合いをもつ壁に仕上げていくのです。
内装を塗り壁にするデメリット
健康的で手仕事の味わいのある塗り壁ですが、実はデメリットも存在します。
コスト(費用)が高い
何度もお伝えしていますが、塗り壁は職人さんの手仕事によって完成します。そのため手軽なビニールクロスに比べると、どうしても人件費というコストがかかってしまいます。
また、素材も天然素材を使用していますので、ビニールクロスに比べると数倍高価なものとなります。
絵柄みたいなものがない
ビニールクロスにあるようなかわいい花柄やクールな幾何学模様は塗り壁にはありません。子供部屋によく使われる愛らしい絵柄もないので、もしかするとお子さんにはがっかりされるかもしれません。
工事期間が長め
塗り壁は、職人さんが手仕事でおこない、コテでていねいに塗っていくため、ビニールクロス壁に比べると工期が長くなります。その分、コストがかかってしまうことはデメリットのひとつといえます。
まとめ
現在の住宅では、コストの低い内装にはビニールクロスを、外壁にはサイディングを使うことがほとんどです。
塗り壁は、手仕事のためコストは割高になりますが、自然素材の魅力と落ち着いた風合い、そして高い安全性があります。健康に過ごしたい、こだわりの家を建てたいと思われるなら、塗り壁を検討してみましょう。