- 「『堀部安嗣作品集』って、どんなもの?」
- 「堀部安嗣さんの設計した家・建築はどんな感じ?」
この記事ではそんな疑問にお答えするかたちで、『堀部安嗣作品集』の読書感想とご紹介をします。
堀部安嗣さんがこれまで設計してきたなかで、1994年から2014年までの全建築と設計図集を一冊の本にしたのがこの「堀部安嗣作品集」です。

目次
『堀部安嗣作品集』の概要

この本には、堀部安嗣さんが建築家として独立した後、1994年-2014年までの20年間に設計した68の建築作品の写真や図面がまとめられています。
豊富な写真、豊富な図面、そして、堀部安嗣さん自身による文章、エッセイ、また、建主のエッセイを掲載しています。
堀部安嗣さんはクリエイター感・建築家感がありますね
堀部安嗣さんの文章を読みますと、とってもクリエイター感・建築家感がありますね。
たとえば、以下のような文章。
建築の行為をオーケストラの演奏にたとえると、工事に関わる職人は楽器の演奏者であり、施工の現場監督は彼らをまとめる指揮者である。建主は演奏の機会と場を与えた人であり、住宅であればその演奏を聴き続ける聴衆にもなる。それでは設計者はというと、私は作曲者にたとえられるのではないかと思う。
実際、たしかにそうなのだと共感します。
設計者は直接的に工事をするわけでもないですし、直接的に工事を指揮するわけでもないです。ただ、全体をつくりあげる図面というか、楽譜を書くことで創造するという意味で、やはり作曲者のようですね。
特徴はやはり開口部(窓)がとても美しい
堀部安嗣さんの設計される建築物、特に住宅が多いのですが、特徴としてはやはり開口部(窓)がとても美しいというのがあります。
この特徴は初期の作品「南の家」「秋谷の家」といったところからも、すでに伺えます。
具体的に言えば「ただ、そこに開口部があるだけ」というようなデザインです。
細かい話になるのですが、建具(この場合はサッシ、造作の窓)をすべて引き込むことができるようにつくってあります。そうすることで、スッキリ見せることができます。

また、建具があったとしても、建具の取り付け位置と開口部まわりの枠の設計でスッキリ見えるようにされています。
また、堀部安嗣さんの使う素材については初期の作品から現在まで、たいてい一貫しています。
具体的には床は杉やタモといった樹種の無垢フローリング。
壁はしっくい(漆喰)が多いですが、珪藻土壁もあります。
天井は同じくしっくい(漆喰)のパターンや杉といった無垢の板・木を使うことも多いです。
堀部安嗣さんは素材感を大切にされていますから、しっくい(漆喰)や珪藻土といった手仕事系の左官塗り壁を多用しますし、また、杉やタモ、サワラといった無垢の木、本物の木を多用されています。
竹林寺納骨堂
高知市五台山竹林寺の納骨堂も堀部安嗣さんの設計です。
竹林寺納骨堂は約1,300体を納める、幅2m、奥行き25mの納骨室が2列、通路を中心軸として一直線に延びるつくりの建築物です。
>>竹林寺納骨堂についても書いています。堀部安嗣さんの詳細記事
まとめ:価格はお高いですが、参考資料としては安価
この『堀部安嗣作品集』なのですが、価格はお高く9,800円(税別)となります。
9800円と思っていたら、廃版?か何かでプレミアム価格になっていますね。
金額だけを見るとお高いかもしれません。
ただ、詳細な図面なども入っていますから、実際に堀部安嗣さんがどのようなディテール、詳細を書いて表現したのかがわかります。
そういうわけで、参考資料としての情報価値がとても高く、価値と比すると安価ではないかな、と思います。
買われる方が建築業者、設計者であるか、一般の建主の方であるかで、価値は変わるかもしれません。
とにかく、人気の住宅作家・建築家の堀部安嗣さんの1994-2014年の全建築と設計図がまとめられた本書は情報価値の高い一冊です。
堀部安嗣さんについてもっと詳しく知りたい方へ
人気の住宅作家・建築家の堀部安嗣さんについては、下記の記事で詳しくご紹介しています。
>>堀部安嗣さん(住宅作家・建築家)特集。建築思想、実際の事例など
関連:住宅作家・建築家まとめ