長期優良住宅とは?メリット・デメリット、基準や条件など解説!

長期優良住宅とは、基準やメリット、デメリット
  • 「長期優良住宅とはどんなもの?」
  • 「長期優良住宅というフレーズを聞いたのですが、メリットがありますか?」
  • 「長期優良住宅の基準とか細かいことを知りたいです」

この記事ではこのような疑問にお答えします。

今回の記事では「長期優良住宅とは?メリット・デメリット、基準や条件など解説」します

目次

長期優良住宅とはどのような家のことですか?

長期優良住宅とは「長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅」という意味です。

長期優良住宅を提唱しているのは国土交通省・日本政府です。

長期優良住宅ができた背景

そもそもは、これまで「つくっては壊す」というようなスクラップアンドビルド型の社会でした。実際、木造住宅は30年も経たずに解体されるというデータがあります。

この流れを変えたいということで、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として提唱されました。

政府として法律にもなっていまして、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日に施行されました。

参考:[外部リンク]住宅:長期優良住宅のページ – 国土交通省

長期優良住宅の認定を受ける手続き

長期優良住宅の認定を受ける手続きとしては、認定の基準を満たした住宅を設計し、登録住宅性能評価機関で事前審査(技術的審査)を受けた後に、所管行政庁へ申請することになります。

そして、適合していた際には認定を受けることができます。

認定の申請

長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。

認定の基準

長期優良住宅の認定の基準には以下に掲げる基準に適合する必要があります。

  1. 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
  2. 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
  3. 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
  4. 維持保全計画が適切なものであること。

細かい基準の概要は下記になります。

  1. 劣化対策
  2. 耐震性
  3. 可変性
  4. 維持管理・更新の容易性
  5. 高齢者等対策(共同住宅等のみ)
  6. 省エネルギー対策
  7. 住戸面積
  8. 居住環境への配慮
  9. 維持保全計画

劣化対策

劣化対策とは数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること、を指しています。

具体的には劣化対策等級3を満たし、構造の種類に応じた措置を要求されます。木造住宅の場合、床下・小屋裏に点検口を設置、床下空間の有効高さを330mm確保することなどです。

耐震性

耐震性とは極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ることです。

具体的には、耐震等級1以上でかつ、限界耐力計算を行い、安全限界変形・木造で1/40以下を確認するか、耐震等級2以上(新築住宅)、免震建築物のいずれかを満たしている必要があります。

可変性(共同住宅・長屋のみ)

可変性は居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていることです。

住戸専用部についての更新対策や躯体天井高2,650mm以上を要求されます。

維持管理・更新の容易性

維持管理・更新の容易性とは、構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること、です。

具体的には維持管理対策等級(専用配管・共用配管)3(新築住宅)、更新対策等級3(新築住宅)を満たしている必要があります。

高齢者等対策(共同住宅等のみ)

高齢者等対策とは将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること、です。

具体的には高齢者等配慮対策等級3以上を要求されます。

省エネルギー対策

省エネルギー対策とは、必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていることです。

具体的には断熱等性能等級4以上を要求されます。

住戸面積

住戸面積とは良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること、です。

具体的には新築一戸建ての場合、床面積の合計が75平方メートル以上であることを要求されます。

居住環境への配慮

居住環境への配慮とは、良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること、です。

具体的には、地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容に適合することが要求されます。

維持保全計画

維持保全計画とは、建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること、です。

具体的には維持保全計画に以下の事項を定めることが求められます。

  • 構造耐力
    上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分、給水・排水の設備について、仕様に応じた点検の項目・時期(点検の時期の間隔が10年以内であること)
  • 点検の結果、必要に応じて補修等を行うこと
  • 地震・台風時に臨時点検を行うこと
  • 維持保全の実施期間が30年以上であること

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅の認定を受けると、いくつかのメリットがあります。
ここでは、それらのメリットについてみていきます。

長く住み続けられる優良な住宅に住むことができる

まず、長期優良住宅に認定されている住宅ということは、国土交通省が求める基準をクリアしているということなので、住宅として長持ちする優良な住宅であるということです。

ですから、長く住み続けられる優良な住宅に住むことができるということが大きなメリットの一つです。

減税される・税制優遇

長期優良住宅に認定された場合、わかりやすいメリットとして得られるのが「減税・税制優遇」です。税金が減ったり、返ってきたりします。具体的なお金で還元されるので、メリットになります。

住宅ローン控除(長期優良住宅は限度額が引き上げ)

通常の一般住宅の場合、住宅ローン控除の控除対象限度額と10年間の控除最大額は以下の通りです。

区分 住宅ローン控除の控除対象限度額 10年間の控除最大額
一般住宅 4000万円 400万円
長期優良住宅 5000万円 500万円

投資減税型の特別控除

長期優良住宅の認定を受けるための標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%を、その年の所得税から控除されます。

※平成33年12月31日までに入居した場合。住宅ローン控除との併用はできません。

登録免許税(長期優良住宅は税率引き下げ)

長期優良住宅の場合、登録免許税の軽減があります

区分 所有権保存登記 所有権移転登記
一般住宅 0.15% 0.3%
長期優良住宅 0.1% 0.2%

不動産取得税(長期優良住宅は課税標準から控除額が増える)

長期優良住宅の場合、不動産取得税の軽減があります。
具体的には課税標準から控除額が増えます。

「不動産取得税=(固定資産税評価額ー1200万円)×3%」ということになりますから、固定資産税評価額が1300万円より大きい場合、ざっくり3万円程度が軽減される計算になります。

  • 一般住宅の控除額:1200万円
  • 長期優良住宅の控除額:1300万円

固定資産税(長期優良住宅は税額が1/2期間の延長)

長期優良住宅の場合、固定資産税の軽減が適用される期間が延びます。

  • 一般住宅の減税措置の適用期間:3年間・1/2
  • 長期優良住宅の減税措置の適用期間:5年間・1/2

補助金を受けることができる可能性がある

長期優良住宅の認定を受けている住宅の場合、「地域型住宅グリーン化事業」の制度を利用することで、補助金を受けることができる可能性があります

地域型住宅グリーン化事業とは、一定の条件を満たした地域の中小工務店が住宅を建てたときに上限100万円までが出る制度です。

参考:[外部リンク] 地域型住宅グリーン化事業

住宅ローンの金利引き下げがある(フラット35の場合)

長期優良住宅の場合で、35年固定金利の住宅ローンである「フラット35」を借りる際、金利の引き下げがあります

具体的には【フラット35】S 金利Aプラン(当初10年間金利引下げ)に該当しますから、住宅ローンを借り入れてから当初10年間、年0.25%の金利引き下げが適用されます。

これは結構大きな金額になります。

参考:[外部リンク]【フラット35】S:長期固定金利住宅ローン

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅には多くのメリットがあることがわかるかと思います。

ただ、一方でデメリットもいくつかあります。

ここでは長期優良住宅のデメリットについて解説します。

申請に時間とお金(手続き費用)がかかる

長期優良住宅にするときのデメリットとして一番は「申請手続きに時間とお金(手続き費用)がかかる」ということです。

純粋に長期優良住宅の申請手続きだけで1カ月程度の時間がかかります。工期や引き渡し時期が問題になる場合は、この時間がかかるということが大きなデメリットになります。

また、お金もかかります。
手続き費用です。
人件費がかかっています。

住宅会社や工務店によっては、長期優良住宅の認定も価格に含まれている場合がありますが、それは経営上で費用請求を別途しないというだけで、実際に長期優良住宅の認定を受けるための書類作成業務や手続き手間がかかりますから、そこの人件費はかかっています。価格をどこに入れるかという話になります。

グレード・仕様が低い注文住宅の場合、建築コストが上がる

長期優良住宅の基準は劇的に高いハードルというわけではないですが、比較的安価なローコスト住宅などの場合、グレード・仕様が低い注文住宅になりますから、長期優良住宅の基準に合わせようとする場合に建築コストが上がる可能性があります。

まとめ

以上が、長期優良住宅の意味やメリット、デメリット、そして、基準や条件などになります。

「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として始まった長期優良住宅の制度

長く住み続けられる優良な住宅というコンセプトに則った、いい家というだけでなく、税制優遇(減税)や住宅ローン金利の引き下げといったメリットもあります。

注文住宅の家づくりを検討する際にはご自分のケースに当てはめてメリット・デメリットを比較検討されることをおすすめします。

長期優良住宅とは、基準やメリット、デメリット

ABOUTこの記事をかいた人

でんホーム株式会社 取締役・編集長。設計に口出し、現場を管理し、記事にも口出しする何でも屋さん。油山幼稚園→堤小→長尾中→福岡中央高→九州大学経済学部卒。2人の娘を持つ。【趣味】読書