ドイツの家電メーカー「ミーレ(Miele)」。
ミーレは洗濯機と食洗機が有名です。
今回はミーレの食洗機(食器洗い機)の歴史についてご紹介します。
ミーレの食洗機(食器洗い機)の歴史はヨーロッパの食洗機の歴史。
「ヨーロッパの食洗機がどういう進化をたどったか?」がわかります。
目次
ミーレ(Miele)の食洗機(食器洗い機)のはじまり
1929年。
ミーレはヨーロッパ初の国産電気食器洗い機を発表しました。
1920年代、ドイツ経済はハイパーインフレによって困難な時代を迎えていました。そこからドイツ経済が徐々に回復していった頃。
ミーレ社はヨーロッパ初の国産電気食器洗い機を発表したわけです。
残念なことに、この発表のあと、世界大恐慌の時代に突入します。
世間では節約モード。
最初の顧客はケータリングを行う中小企業。大量の食器を洗う仕事がある会社でした。
個人向けには何年もの間、手の届かない贅沢品であり続けました。
ミーレ食器洗い機モデル EM sk8/4(1929年-1939年)
1929年に発表されたミーレ食器洗い機の最初のモデル。
ワイヤーバスケットに入れる前に食器から食べカスを取り除かないといけませんでした。
3-4リットルのお湯を入れて、フタを閉めます。
それからスイッチをオン。
電動のプロペラがお湯をかき回し、食器洗いをするものでした。
汚くなった水が流れ、お湯をさらに投入します。
8分間で洗うものでした。
ミーレ食器洗い機モデルAK(1933年-1939年)
世界大恐慌が終わり、ミーレ社は再び食器洗い機市場に戻ってきました。
自動食器洗い機の時代になっていくことが確実視されていました。
パンフレットにはこう書かれていました。
「ミーレ社の食洗機はとっても速いです。5-8人分の食器をたった8分で洗ってしまいます」
このミーレ食器洗い機モデルAKは特にコストパフォーマンスに優れた家電製品として打ち出しました。
一般家庭用の通常バージョンだけでなく、飲食店やカフェなどといった企業向けに特別なバスケットを装備したバージョンもありました。
ミーレ食器洗い機モデルG10 (1960年-1963年)
ミーレによる全自動の食器洗い機は1960年に誕生しました。
ヨーロッパ全土で次世代の食器洗い機をリードするため、ミーレのデザイナーはまったく新しいシステムを開発しました。
以前の食器洗い機では、下のほうでプロペラが水を回転させることで、食器を洗浄していました。
この新しい食器洗い機では、食器のはいったバスケットを上下から、回転するスプレーアームのノズルから水を噴射させるようになりました。
この新システムによって、食器の置く場所が問題にならなくなり、正面から2つの引き出し式バスケットに食器を入れることができるようになりました。
フロントオープンの確立です。
ミーレ食器洗い機モデルG25 据置型モデル(1962年-1967年)
小さな家庭ではそこまで大きなスペースがありません。
そこでミーレは1962年にこの据置型の食器洗い機を開発しました。
コンパクトなので、置くスペースを選びません。
冷蔵庫の上、棚の上、地下室、壁の収納にビルトインなど。
洗浄技術は通常のものと同じでした。
つまり、上と下にスプレーアームがあって、2つのバスケットを洗浄するというかたちです。
ミーレ食器洗い機モデルG45(1963年-1966年)
このミーレ食器洗い機モデルはその高さという点において重要です。
キッチンのワークトップの下にフィットする高さは82cmだけでした。
そして同時にその容量も大きく拡大されました。
ミーレワイドジェットシステムという名称で、洗浄技術も進歩しました。
イメージとしては、水を蛇口から出して食器洗いすると、まあまあきれいになります。
その一方で、水をシャワーみたいなもので、ジェット噴射したら、もっときれいになります。
これがミーレのワイドジェットシステムです。
このミーレ食器洗い機モデルG45は当時最も売れた食器洗い機でした。
ミーレ食器洗い機モデルG50 (1966年-1971年)
食器洗い機におけるまったく新しい世代のモデルがこの「ミーレ食器洗い機モデルG50」でした。
「センセーショナル」という言葉がマッチするモデルです。
第一に、食器洗い機自体をたったひとつのダイアルでコントロールできるようになりました。
ノーマル、ショートコース、コールド、熱い食器など、プログラムをひとつのダイヤルで選択できるようになりました。
加えて、この「ミーレ食器洗い機モデルG50」はビルトインで軟水化システムが備わるようになりました。
水が硬水なエリアでも、軟水レベルで洗浄できるようになったわけです。
ミーレ食器洗い機モデルG500 (1970年-1973年)
「ミーレ食器洗い機モデルG500」のうたい文句はこうでした。
「この5年、ミーレ食器洗い機モデルG50よりいい食器洗い機が出なかったので、自分たちでつくりました」
特筆すべき特徴は「一体型ケース」です。
これは食器洗い機のキャビネットと外側のケースを一体型で作り上げるものです。
これによって、食器洗い機の安定性が高まり、また、断熱性が高まると同時に騒音の軽減にもつながりました。
それ以外にもいくつもの改善点があり、その結果、「ミーレ食器洗い機モデルG500」はヨーロッパで最も売れた食器洗い機になりました。
ミーレ食器洗い機モデルG565 SU(1980年-1984年)
この「ミーレ食器洗い機モデルG565 SU」は世界初の自動洗剤量調整システムを持つ食器洗い機です。
ミーレの食器洗い機は洗浄サイクルによって、適切な洗剤の量を自動で独自で判断して使用するシステムを持つようになりました。
ミーレ食器洗い機モデルG595 SC (1987年-1995年)
この「ミーレ食器洗い機モデルG595 SC」はさまざまなイノベーションを持った画期的な新商品でした。
最も特筆すべき特徴は、本体のサイズはそのままに内部の容量を大幅に増加させたことです。
これによって、3つ目のバスケットをつくることができました。
「カトラリートレイ」として現在知られているバスケットです。
食器洗い機の一番上にあるバスケットです。
このカトラリートレイをつくることのできるメーカーは長らくミーレだけでした。
カトラリートレイができた結果、すべてのカトラリーを効果的かつ、穏やかに洗い上げることが可能になりました。
傷がつくこともなく、出し入れもしやすくなりました。
参考までにカトラリートレイ以前のバスケットはこちら。
まとめ
ミーレの食洗機の歴史はヨーロッパの食洗機の歴史です。
100年くらいの間で、色々な進化を経て、現在の便利なミーレ食洗機になっています。
そもそもは1929年にヨーロッパ初の電気食器洗い機が誕生。
1929年頃の世界恐慌の影響を受けて、一般消費者には普及しなかった時代。
そして、コストパフォーマンスに優れた家電製品としての打ち出し。
1960年代に全自動の食洗機が誕生。
現在でも見られるスプレーアームのノズルから水を噴射するシステムであり、フロントオープン型食洗機の誕生。
1970年には食洗機の安定性と断熱性、騒音の軽減に寄与する一体型ケースが誕生。
1980年代にはマイクロプロセッサー技術の発展で、世界初の自動洗剤量調整システムを食洗機に導入。
1987年には3つ目のバスケット。
カトラリートレイが誕生します。
こうなると、ほぼほぼ現代の食洗機とさほど変わらないようなものになっています。
ただ、50年くらいで食洗機は大きく進化していったことがわかります。
現在、便利に食洗機を使うことで家事負担を軽減できていますが、これらの進化・イノベーションがあって、こんなに豊かな生活ができるのだな、と感じます。
ミーレ(Miele)についてもっと詳しい情報はこちら
ミーレ(Miele)については本サイトで色々と詳しく記事にしています。
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「ミーレの製品って、どう良いんですか?」とミーレ・ジャパンに聞いてみた
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ミーレ食洗機の歴史はヨーロッパの食洗機の歴史。
ミーレの食洗機はどのような歴史を経て、進化していったのかをまとめています。
ミーレ洗濯機の歴史
ミーレ洗濯機はバター分離機から洗濯機へと転換したのがスタート。
ミーレの洗濯機の歴史をまとめています。
世界各地のミーレ・ショールーム
- ミーレセンター表参道・日本にて取材しました
- ミーレ 本社ショールーム(ドイツ)
- ミーレミュージアム(博物館)(ドイツ)
- ミーレ 上海ショールーム(中国)
- ミーレ 香港ショールーム(香港)
- ミーレ ベルリンショールーム(ドイツ)
- ミーレ デンマークショールーム(デンマーク)