ロックウールとグラスウール、どう違うのか?【断熱材の比較】

目次

家づくりに欠かせない断熱材!役割や種類は?

家には窓やドア、外壁や床材などさまざまな建材が使われています。断熱材も家づくりに欠かせない建材の一つです。

断熱材は屋根や天井、壁、床下などの内部に設置されるため、外からは見えませんが、家の住み心地やエネルギー効率、耐久性などに関わる重要な役割を担っています。

断熱材の主な役割は、家の中と外との熱移動を遮断することです。また、外気との温度差により生じる結露を防ぐことで、家全体をカビや腐食から守ってくれます。

さらに、断熱材は家を火事から守る耐火性や防音性能、害虫を防ぐ防虫の役割なども果たしています。

日本では「住宅の省エネルギー基準(省エネ基準)」により、住宅や建築物の断熱性能の基準が定められています。

昭和55年に制定された省エネ基準法は、その後段階的に改正・改訂され、平成29年には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」(平成28年省エネ基準)が施行されました。これにより、住宅の窓や外壁などの外皮性能の断熱性や遮熱性は平成28年省エネ基準をクリアすることが求められるようになっています。

断熱性能が高い住宅は冷暖房効率も高く、地球温暖化対策にも貢献します。

断熱材の種類

断熱材は、大きく3つの種類に分けられます。それが人造鉱物繊維の「繊維系断熱材」、プラスチックを発泡させた「発泡プラスチック系断熱材」、自然素材から作られた「天然素材系断熱材」です。

3種類の中でもさらに細かく分類されます。

「繊維系断熱材」はグラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどがあります。

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2020年8月2日

「発泡プラスチック系断熱材」は押出法ポリスチレンフォーム(XPS)硬質ウレタンフォームビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)フェノールフォームなどで、「天然素材系断熱材」は羊毛断熱材や炭化コルクなどです。それぞれにメリットやデメリットがあり、工法も違います。

断熱工法の2タイプ「充填断熱工法」と「外張り断熱工法」

断熱工法には、大きく分けて「充填断熱工法」と「外張り断熱工法」があります。

充填断熱工法」は、壁や天井などの構造物の中に断熱材を充填する工法です。グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材を使用する場合は、この工法が用いられます。

吹き込み工法やパネル工法も充填断熱工法に含まれます。充填工法はコストが低く抑えられる反面、隙間ができやすくなるなどのデメリットがあります。防湿フィルムを貼るなど、結露防止対策が必要です。

外張り断熱工法」は発砲プラスチック系の断熱材に用いられ、壁や屋根の外側に断熱材を設置する工法です。この工法は隙間が生じにくく結露が出にくいメリットがありますが、コスト高になります。

グラスウールとは?

「繊維系断熱材」の中で、もっとも良く使われているのがグラスウールとロックウールです。

このうち、グラスウールは価格が安価であることから広く普及しています。ここでは、グラスウールのメリットやデメリット、用途などについて解説します。

グラスウールとは、高温で溶かしたガラスを繊維状にしたものです。繊維の間にできた空気層が断熱効果を発揮するため、繊維の密度が高ければ高いほど空気層が固定され、断熱効果も高くなります。

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グラスウールのメリット

グラスウールの最大のメリットは価格が安いということです。

また、グラスウールにはコストパフォーマンスに優れている点以外にも、さまざまなメリットがあります。燃えにくいことも大きなメリットの一つで、グラスウールは不燃性のガラスを原料にしているため、燃えにくいだけでなく高温にさらされても変形や溶解しにくいという特長があります。延焼や類焼もしにくく、万が一火事となった際にも有毒ガスを発生させることがありません。

また、グラスウールは温度や湿度による変形が起きにくい素材です。

薬品などが付着しても変形や変質しにくく、耐久性に優れています。さらに、多孔質のため吸音性に優れているのも特長です。

家の内外の音を遮断するだけでなく、家の中でも部屋と部屋の間の音や2階の音などを軽減する効果があります。無機質素材のため、シロアリなどの害虫にも強いこともメリットです。さらに、主に資源ごみとして集められたリサイクルガラスを原料にしていることから、環境に配慮した素材と言えます。

グラスウールのデメリット

逆に、グラスウールのデメリットは水に弱い点です。水に濡れると断熱性能を発揮しなくなるため、徹底した防水や結露対策が必要です。

ただし、近年では耐水性能も向上し、撥水加工された製品も出ています。また、耐水性の弱点はグラスウール自体の問題より、施工の問題によるところが大きいと考えられています。

グラスウールは住宅の断熱材以外にも、さまざまな用途があります。空調ダクトや船舶で断熱材として利用されているほか、放送室やスタジオ、飛行場などの防音壁などにも利用されています。

ロックウールとは?

ロックウールとはグラスウールと同じ「繊維系断熱材」ですが、原料は玄武岩や製鉄の際の副産物である高炉スラグです。

原料の鉱物を高温で溶融して繊維状にした人造繊維であり、断熱性や保湿性に優れ、住宅はもちろんのこと、ビルや工場などの断熱材としても使用されています。グラスウール同様に耐火性にも優れており、有毒ガスを発生させません。

ロックウールは別名を岩綿といい、アスベストの石綿に似ているように思われがちですが、石綿と違って発がん性はありません。環境先進国であり、冬が厳しい北欧で最も普及している断熱材であることからも、性能の高さと安全性がうかがえます。高い吸音性能もロックウールのメリットです。低周波から高周波まで幅広く吸音するため、空港などの防音壁にも使われています。また、ロックウールは耐水性が高く結露の心配がないため、土台の腐食やシロアリの発生も防ぎます。

ロックウールの製品

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2020年8月2日

ロックウールとグラスウールの違いとは?

ロックウールとグラスウールの違いとは何でしょうか。

結論から言えば、断熱効果に大きな差はありません。

一昔前はグラスウールの耐水性の弱さが指摘されていましたが、近年はほとんど問題視されることはなくなりつつあります。

グラスウールの方が柔軟性が高く、ロックウールより変形させやすいという点はありますが、ロックウールが使いにくいというほどのものではないようです。

原料の違いはあるものの、いずれも劣らず優れた性能の断熱材です。

断熱材は家の構造や使う場所によって適したものを断熱材に応じた工法で施工して、本来の性能が発揮されるものです。そのため、安心できる業者に最適な断熱材を選択してもらうことをおすすめします。