- 「フェノールフォームとは、どんな断熱材ですか?」
- 「ネオマフォームという断熱材を聞きました。どんなものですか?」
- 「断熱材の中で、フェノールフォームについて詳しく知りたい」
この記事ではこのような疑問にお答えします。
今回は「フェノールフォームとは?特徴やメリット・デメリットを解説」というテーマでお伝えします。
目次
フェノールフォームの概要
フェノールフォームとは、特殊な樹脂(フェノール樹脂)に硬化剤や発泡剤などを配合し、板状に形成した断熱材です。
断熱材の種類としては「プラスチック系ボード状断熱材」というカテゴリに入ります。また、断熱工法としては「外断熱」工法のカテゴリに入ります。
プラスチック系ボード状断熱材
フェノールフォームの具体的な製品で言えば、最もポピュラーな製品が旭化成建材の製品「ネオマフォーム」です。
フェノール樹脂というプラスチック系の原料をベースに製造されていまして、また固形でボード状にされた製品です。これを耐力面材などの外壁下地のようなところに貼っていくことで外断熱として断熱性能を発揮していくようにつくられた製品です。
フェノールフォームの沿革
1940年代初頭、世界初となる商業用のフェノールフォームがヨーロッパで生産されました。以降、世界各国で性能が評価され、多種多様な業界で多用されています。
日本国内では、1960年頃から生産が活発になりました。生産が始まった直後から、断熱性能が優れている上に、経年劣化が発生しにくい点が好評を博していました。工業用の資材、建築用の断熱材として、瞬く間に普及しています。
フェノール樹脂について
フェノールフォームの原料であるフェノール樹脂は、ホルムアルデヒドとフェノール、2種類の成分が合成されたプラスチックです。
1910年、ベークランド博士が工業化させることに成功しました。以降、幅広い分野で用いられています。合成樹脂の中でも、特に歴史が古く、実績は折り紙付きです。
1929年には日本国内で約20トンのフェノール樹脂が生産されていました。しかし、なぜ多方面で重宝されてきたのでしょうか。それは、硬化した後に加熱によって変性しないという樹脂の特性が一因となっています。
フェノール樹脂を成形・加工した製品は、耐熱性や電気絶縁性など、多くの特性を保持しています。安定的に使い続けられる点が大きな魅力の1つです。
そのため、用途が多岐にわたっています。
木造住宅の断熱材としての用途としてのフェノールフォームだけでなく、半導体や自動車のパーツ、食器など、色々な製品に用いられています。
フェノールフォームのメリット
外断熱工法の断熱材としては、かなりポピュラーな部類に入る「フェノールフォーム」。
ここではそのフェノールフォームのメリットについて解説します。
高い断熱性(熱伝導率が低い)
フェノールフォームは熱伝導率がとても低いです。つまり、高い断熱性を持ちます。もちろん、厚み次第ですが。
具体的には「熱伝導率〔W/(m・K)〕:0.020」です。
例えば、高性能グラスウール断熱材16K相当は「熱伝導率〔W/(m・K)〕:0.038」になります。
熱伝導率は数値が低いほうが、熱を伝えないということでよいものとされますから、上記の内容としては「同じ厚みであれば、高性能グラスウール断熱材の2倍弱くらい、フェノールフォームのほうが熱を伝えない」という内容になります。
ただ、フェノールフォームは厚みが35mmが多いので、高性能グラスウール断熱材16K相当で90mmあれば、フェノールフォームの断熱性能を超えてしまいますけれども・・・
これは熱抵抗というか、熱を最終的に伝えるかどうかのファクターのひとつに「熱伝導率」と「断熱材の厚み」があるからです。
熱伝導率が高くても(数値が低くても)、断熱材の厚みがものすごく厚いのであれば、そちらのほうが断熱性能は高くなります。
イメージいただければ伝わるかもしれませんが、紙1枚だと強度としては弱いですが、紙を30枚くらい重ねてみると、強度が強いです。紙1枚で叩いても、ペラっという感じですが、紙200ページの雑誌で叩いたら、それなりに痛そうじゃないですか?そういうイメージです。
断熱材そのものの熱伝導率が低くても、断熱材の厚みを確保できるのであれば、そちらのほうが断熱性能が高いという場合があります。
水・湿気に強い
プラスチック系断熱材の特徴の一つですが、水・湿気に強いです。
押出法ポリスチレンフォーム(XPS)、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)も同じく、水・湿気に強いですが、フェノールフォームも同じです。
原料がプラスチック(樹脂)なので、水分を含んで影響を受けるということがほとんどないのです。水・湿気に強いというのはかなりのメリットです。
施工性が高い(高気密にしやすい)
フェノールフォームは外断熱用の断熱材ですが、その施工性は非常に高いです。つまり、高気密にしやすいというわけです。
具体的にはフェノールフォームを専用のビスで留めまして、その後に継ぎ目に気密テープを貼ります。
これは何を意味しているかというと、隙間になりそうなところは気密テープでふさがれますし、また、フェノールフォームそのものがボード状なので、断熱欠損しているところがすぐにわかるわけです。
スッポリと断熱されるわけですから、スッポリしていない部分があれば、すぐにわかるわけです。
そういうわけで、施工性が高く、高気密高断熱住宅をつくりやすい素材・断熱材というわけです。
長期安定の耐熱性
一般的なプラスチックをイメージされると「熱に弱い」というイメージがあるかと思います。
実際、多くのプラスチックは熱に弱く、熱を受けると溶けてしまいます。
その一方で、沿革でもお伝えしたのですが、フェノールフォームに使われるフェノール樹脂は熱に強く、熱で硬化するという特徴があります。そのため、高い耐熱性・難燃性が求められるところに幅広く用いられている素材です。つまり、長期安定の耐熱性があるというわけです。
たとえば、フライパンの取っ手や自動車の部材など、高い温度、高い熱になるところに使われているプラスチックがフェノール樹脂というわけです。
フェノールフォームのデメリット
ここではフェノールフォームのデメリットについて解説します。
価格が高い
フェノールフォームの最大のデメリットは「価格が高い」ということです。
厚み1cmあたりの断熱性能であれば、トップクラスに高い断熱性能を持ちます。それは熱伝導率が低いからです。
そういうわけで、フェノールフォームを厚く施工することで、薄くて快適な住宅を建築することができます。
ただ、それがなかなか実現しないのはフェノールフォームという断熱材自体の価格が高いからです。注文住宅の建築コストが高くなってしまうからです。
紫外線によって劣化のリスク
プラスチックをイメージいただければなんとなく伝わるかもしれませんが、外の雨ざらしになっているプラスチックって、劣化しませんか?パキパキになって、ちょっと強く扱ったらパキッと割れるような感じで。
これが雨風と紫外線による劣化です。
これは原料がプラスチック(樹脂)ですから、同じようにフェノールフォームでも紫外線によって劣化するリスクがあります。
実際の体験から語るところではあるのですが、実際に長く外に放置しておくと、雨風・紫外線による劣化はします。
ただ、実際のところ、注文住宅に施工された断熱材としてのフェノールフォームはその上に外壁材を施工します。そのため、実際の使用においては、施工が完了してしまえば、雨風・紫外線に曝露することもないので性能に影響を与えるわけではないと申し上げておきます。
衝撃に弱い
実際のフェノールフォーム断熱材を手にとっていただければ、すぐにわかるのですが、比較的衝撃に弱い素材かな、と思います。
同じプラスチック系断熱材の種類で「発泡スチロール」があります。発泡スチロールの厚みが薄いものをイメージいただければ伝わるかと思いますが、薄い発泡スチロールは衝撃に弱いです。実際、殴ったら割れますよね?
そういう感じで、フェノールフォームも同じような感じでして、厚みが壁用の断熱材で35mmですから、そこまで厚いというわけではなく、思いっきり叩いたら割れます。
ただし、圧力には強い印象です。
圧縮したりすると「これはなかなか圧縮できないぞ」という印象を持つであろうほどに強いです。
イメージとしては、圧縮には強いですが、衝撃には弱いといったところです。
フェノールフォームの外断熱用断熱材のメーカー・製品
現在の日本における注文住宅建築において、外断熱用の断熱材としてフェノールフォームを製品として製造販売しているのは2大メーカーになります。
旭化成建材が製造・販売している「ネオマフォーム」と積水化学工業→フクビ化学工業に事業譲受されました「フェノバボード」の2製品です。
旭化成建材・ネオマフォーム
フェノールフォーム断熱材のトップメーカーが旭化成建材でして、ネオマフォームという製品です。
「外断熱ならネオマフォーム」なイメージの断熱材で、有名ですね。
フクビ化学工業・フェノバボード
もともと、積水化学工業が製造・販売していたのですが、フクビ化学工業に事業譲受されたのが「フェノバボード」という製品です。
知名度はネオマフォームに劣りますが、性能は変わらないです。
フェノールフォームのメーカーによる差
注文住宅業界においては「ネオマフォーム」のほうが知名度も高く、シェアも高いと推定されます。ただ、どちらもフェノール樹脂を使ったフェノールフォームですから、大きな差はそこまでないものと思います。
まとめ
フェノールフォームはフェノール樹脂そのものの長い歴史と高い断熱性能(熱伝導率の低さ)を誇る断熱材です。
外断熱用の断熱材としては最もポピュラーな部類に入りますし、外断熱としてフェノールフォームを使いつつ、充填断熱(内断熱)をすることでダブル(W)断熱をするような住宅会社・工務店もあります。
寒冷地などはグラスウールで壁の厚みを厚くすることで高い断熱性能を実現するような住宅会社・工務店もありますし、単位当たりの断熱性能が高いフェノールフォームを使うことで壁の厚みを薄くすることができるのでダブル断熱をするという住宅会社・工務店もあります。
使い方次第ですし、また、コストも高いので、予算との兼ね合いにもなります。
とにかく、コストと厚み、断熱性能という検討事項はありますが、長年の歴史もありますし、信頼できる断熱材のひとつといえます。
動画で解説「フェノールフォーム」
断熱といえば、窓・サッシ。それらの疑問はこちら
フェノールフォームの断熱材を使うことで断熱ゾーンそのものは高性能なものになります。
外断熱ですっぽり断熱です。
それで壁面は断熱されているからいいのですが、ほかにも住宅の断熱で重要なポイントがあります。
それは「窓・サッシ」です。
高気密高断熱住宅で極めて重要なポイント「断熱材」ともうひとつが「窓・サッシ」になりますが、下記の記事では「窓・サッシ」についてまとめています。
断熱材のまとめ記事はこちらに
いい断熱材を選ぶことで、高気密高断熱住宅にすることができます。そういう高性能な住宅にすることで、エアコン1台で家じゅう快適にすることも可能になります。
こだわるべきは断熱材・断熱性能で、それらについての知識を身につける上でも、記事をご覧ください。