なかなか建築家の設計した建物に宿泊するということも機会はないです。一般の住宅であれば、住んでいる方がいらっしゃるわけですから、宿泊することもできません。
ただ、対象がホテル・旅館であれば、宿泊することが可能です。
そういうわけで、今回、佐賀県嬉野市にある「大正屋」さんに行ってみました。
目次
大正屋の概要
大正屋さんは佐賀県嬉野市にある温泉旅館です。美肌の湯として知られる嬉野温泉にあります。
大正14年に創業しており、建物は皇居新宮殿の基本設計も手がけた、日本芸術院会員の故・吉村順三さんによる設計です。
■大正屋さんの公式動画
大正屋の建築
建物は年月が経つ間で、どうしても改修や増築が必要になってきます。建築的に特筆すべきはそのなかで吉村順三事務所にずっと依頼し続けているという点です。
どうしても費用・コストや手間などの要因から近場の建設業者などに依頼したり、知り合いや新しい建築設計事務所に依頼しがちなのですが、大正屋さんは基本的に吉村順三事務所に依頼し続けてこられました。
外観からはあまり見えないのですが、中庭が大きく広がり、別世界の印象を受けます。
吉村順三さんとは何者?
吉村順三さんはアントニン・レーモンド(フランク・ロイド・ライトと共に来日し日本の近代建築に大きな影響を与えた)に師事。そこから吉村順三設計事務所を設立。
日本の伝統的な建築とモダニズム建築が融合された、和モダン的な住宅建築の根幹が出来上がったと言えます。
大正屋の温泉
大正屋さんは佐賀県嬉野市の嬉野温泉にありますから、ウリは温泉です。
大正屋さんには「滝の湯」と「四季の湯」という二種類の温泉施設があります。
滝の湯
滝の湯の見どころは今で言うインフィニティプールではなく「インフィニティ温泉」ですね。
温泉のところと庭・滝のところとつながっているかのように見える温泉です。
インフィニティプールとは水盤や外縁を水で覆い、外縁が存在しないかのように見せかけたプールのこと。
滝・池の中には錦鯉が泳いでいて、錦鯉と一体になっているかのような印象を受ける温泉です。
広さ的には、そこまで劇的に広いわけではないので、滝を眺めながら、水の音を聴きながら錦鯉が泳ぐ様を見ながら、湯船につかり、外とつながっている感じのする温泉です。
現代では、もっとすごい施設があったりするのでインパクト的にものすごいというわけでは無いのですが、
40年前にこのような温泉があったら、驚愕のデザイン性だったり、作りだったりして、ものすごいインパクトがあったことと推察します。
四季の湯
四季の湯は滝の湯の後に建築された、増築された温泉施設です。
宿泊棟から少し奥に歩いて行ったところにあります。
温泉の広さとしては、滝の湯より、かなり大きく天井も吹き抜けでかなり広いです。
規模感がインパクトありますから、当時はこちらも驚愕の施設でしたでしょう。
大空間で開放感が感じられる温泉です。
お部屋・客室(離れ 特室)
今回、宿泊したお部屋はなかなか上質な客室をセレクトしてみました。
客室は「離れ 特室」です。
離れ、といっても棟続きで館内で歩いていくことができます。
中庭を眺めることのできる水辺にロケーションされた一番奥の上位客室となります。
二間になっており、主間にて部屋食でお料理いただきまして、布団で就寝となります。
こだわりの客室ですから、吉村順三さんの設計らしさがあらわれています。
たとえば、障子、枠まわり、開口部などが特徴的ですね。
内風呂
内風呂はヒノキ風呂です。
内風呂で温泉の源泉からのお湯なので贅沢ですね。
お料理
大正屋のお料理ですが、今回は上位客室でしたので、お部屋食でした。
特選和牛や有明海の魚介類をふんだんに取り入れた会席料理になります。
朝食
朝食はこだわりの湯豆腐や茶粥などの健康的なものでした。
まとめ
大正屋は吉村順三さんの設計がピュアに感じ取ることのできる建物と感じました。