杉本博司とは何者か?写真家で現代美術家。経歴など

  • 「杉本博司さんのことについて知りたい」
  • 「杉本博司さんという名前を聞きました。どういう人ですか?」

この記事ではこのような疑問にお答えします。

目次

杉本博司氏の作品

杉本博司とは、写真を始め建築や舞台演出などで作品を発表する現代美術家です。

写真家としての顔

写真家としては、自然史博物館の動物標本を撮影した「ジオラマ」や、映画館のスクリーンに投影された映画を撮影した「劇場」、世界中の水平線を写した「海景」、近代建築の外観をぼかして撮影した「建築」、蝋人形の偉人たちを写した「ポートレート」などのシリーズ作品を発表しました。

建築家としての顔

建築にも携わっています。建築家の榊⽥倫之氏と共に新素材研究所を立ち上げました。新素材とはいえ、従来からある旧素材が最も新しいというコンセプトの研究所です。

舞台演出家としての顔

舞台演出家としては、人形浄瑠璃文楽の「杉本文楽 木偶坊 入情 曾根崎心中付り観音廻り」などの古典芸能の舞台を手掛けます。

活動が評価され、2009年には高松宮殿下記念世界文化賞、2010年に紫綬褒章、2013年にフランス芸術文化勲章オフィシェを受章しています。2017年には文化功労者にも選ばれました。

写真家としての杉本博司

杉本博司氏は多彩な才能を持ちますが、元々は写真家として美術活動を始めています。

立教大学卒業の経歴をもち、卒業後にアメリカへ渡って1975年に「ジオラマ」が評価されます。「建築」を発表するころになると、被写体をぼかしてイメージを投射するというピクトリアリスムの流れを汲むのが明確になります。

ピクトリアリスムは、1970年代に主流であったストレートフォトグラフィーに逆行していました。ストレートフォトグラフィーとは、見える景色や人物を見たままに映すというものです。

独自の世界を追究し続けた杉本は、2006年にロスト・ヒューマン展を行いました。この展覧会では、人の観念ではなく、写真の向こうにある「もの」が持つ力を表現しようとしたのです。このコンセプトは、思想の新潮流である思弁的実在論との関連を指摘できるでしょう。

思弁的実在論とは

思弁的実在論とは、2007年にカンタン・メイヤスーというフランスの哲学者らが提唱したものです。彼らが目指したのは、ポストモダンの思想を超えることでした。

ポストモダンとは、近代を意味するモダンのその後という意味で1970年代に盛んなものでした。ポストモダンの思想は、世界の発展に貢献したものでしたが、どこか行き詰まりを感じさせもしました。ポストモダンの思想が意識や言葉の中に人間を閉じ込めた一面をもつからです。行き詰まりを打ち破るための思想が思弁的実在論です。

思弁的実在論にもさまざまな流派がありますが、「もの」の新たな力を発見しようというのはそのうちの一つだと言えます。「もの」の力で意識や言葉を超えた世界を見ようとしているのです。「もの」の新たな力を追究する杉本博司氏は、建築素材に注目します。

旧素材こそが最も新しい

杉本博司氏は建築家の榊⽥倫之氏と共に新素材研究所を立ち上げました。コンセプトは「旧素材こそが最も新しい」です。

旧素材とはいえ、木や石などの原始的なものから、コンクリートなどの新しいものまで含まれます。素材だけでなく、さまざまな時代の建築技法も使って家を建てます。「護王神社―アプロプリエイトプロポーション」という作品がありますが、社にガラス階段を組み合わせています。古来のものと新しいものを混ぜるのは、杉本博司氏が「劇場」などで見せた時間の表現を追究する流れにあります。さまざまな時代の素材や技法を使うことで、時計で表される誰にも時間とは異なる時間を表現しています。過去と現在の組み合わせで表される時間だけでなく、そこに現れた「もの」は未来永劫続いていくのです。

時間の超越と建築

杉本博司氏にとっては、時間の超越と建築は関わるものです。

「CONCEPTUAL FORMS」という作品がありますが、数式を用いてアルミを切り出したものです。これは数式を具現化したもので、数式という古来のものと切削機という新しいものとの組み合わせでもあります。

建築もまた、数式を用いて具現化したものだと考えられます。建築は過去と現在の素材や技法で作られ、それらが一つの形として未来へとつながっていくのです。

杉本博司氏の建築作品「江之浦測候所」

江之浦測候所
江之浦測候所とは「小田原文化財団 江之浦測候所(読み方は「えのうらそっこうじょ」)」のことで、写真家で現代芸術作家の杉本博司氏が若い頃から集めていたコレクションを展示する場です。

この江之浦測候所は「人類とアートの起源に立ち返る」をコンセプトに、国内外への文化芸術の発信地となることを目指して、ギャラリー棟、石舞台、光学硝子舞台、茶室、庭園、門、待合棟などから構成されています。

詳しくは下記の記事に詳細をまとめています。

江之浦測候所

江之浦測候所が純粋にスゴい。杉本博司の集大成【神奈川県小田原市】

2020年8月2日

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でんホーム株式会社 取締役・編集長。設計に口出し、現場を管理し、記事にも口出しする何でも屋さん。油山幼稚園→堤小→長尾中→福岡中央高→九州大学経済学部卒。2人の娘を持つ。【趣味】読書