家を建築するとき、または土地探しをしているときに「擁壁(ようへき)」という言葉を聞いたことはありませんか。
あまり普段は聞かない言葉ですので知らない人が多いのではないでしょうか。
実は、家を建てるときに擁壁があるのかないのかによって、建築費用が大きく変わってくるのです。
そこで今回は「そもそも擁壁と何か」「擁壁のある住宅にする場合の注意点」「擁壁に関するトラブル」について詳しく解説していきます。

目次
擁壁(ようへき)とは?
擁壁とは、コンクリートやブロックを使って斜面や崖などの崩壊を防ぐための「壁状の構造物」のことをいいます。崩落を防ぐという意味では「土留め」と同じですが、簡易的なものを「土留め」、長期的な構造を「擁壁」と呼んでいます。
擁壁の役割
擁壁は、土地に高低差がある場所に家を建てる場合、側面の土が崩落するのを防ぐ役割があります。
道路より高い位置に建てられている家は、崩落を防ぐ役割はもちろんですが、高さを合わせるためにも擁壁が必要になります。
土を上に積み上げていくと、ある一定の角度までは崩れません。この角度を「安息角(あんそくかく)」といいます。しかし、この安息角を超える高低差を地面に設ける場合に擁壁が必要となるのです。
土は自然の状態で放置しておくと、横からの圧力で斜面が崩壊します。
そのため、擁壁はコンクリートや石、ブロックを使って土の斜面が崩落することのないようにしています。
大きな石を使って擁壁としている代表的なものにお城の石垣があります。高低差のある土地の場合は、擁壁がなければ上に建つ建物を守ることはできないのです。

住宅建築で関係する擁壁の種類
擁壁にはいくつか種類があり、宅地造成等規制法によって法律で定められています。そのうちのいくつかをご紹介しましょう。
練積み式擁壁
練積み(ねりずみ)式擁壁は、間知ブロックと呼ばれるコンクリートブロックや間知石を積み上げて、そのすき間に連結剤の役目を果たすモルタルやセメントを充填し、強い状態を作り上げたものです。
少しわかりやすく言うと、私たちがガーデニングをしているときに、花壇の土が崩れないよう石を数個積み上げることがありますよね。石を積み上げただけの壁はちょっとした衝撃で崩れてしまいますが、セメントやモルタルで充填すると崩れることがありません。これと同じようなことを建築現場で再現しているのです。この練積み式擁壁の下に、コンクリートを打ち込めば、さらに強固なものとなります。
間知ブロック(けんちぶろっく)
間知ブロックは、擁壁の施工用に利用されるコンクリートでできたブロックで、形が決まっているため施工が比較的容易という特徴があります。
間知石練積み擁壁
間知ブロックがコンクリートで作られたものであったのに対し、間知石は職人が原石を加工して間知石を作ることから始めます。施工が難しくまさに職人技でなければ擁壁を作れません。
片持梁式擁壁
片持梁式擁壁(かたもちばりしきようへき)は、鉄筋コンクリート造りの擁壁のことで、L字、逆T型があり大きな基礎を持っていることが特徴です。埋め込まれた基礎部分の土の重みで擁壁を押さえます。
L型擁壁(鉄筋コンクリート造)
L型擁壁は、その名の通り、断面がL型に見えることからそう呼ばれています。
練積み式擁壁では傾斜がなければ施工できませんでしたが、L型擁壁なら垂直ですので土地を有効活用できます。
また、ひとつひとつ積み上げるのではなく機械で設置していくために工期を大幅に短縮できるというメリットもあります。

擁壁のある住宅にする場合の注意点
ではここからは、擁壁のある住宅に関する注意点をいくつか見ていきましょう。
擁壁の強度や劣化に注意
頑丈な石やコンクリートで作られた擁壁でも、数十年も経てば劣化が進んでしまいます。とりわけ、購入を検討している物件に古い擁壁がある場合は注意が必要です。
擁壁は、劣化している部分だけを補修しても根本的な解決にはならず、また、現在の法律に適合していない場合は取り壊して新たに作り直さなければなりません。擁壁工事は高さや面積によって異なりますが、数百万円から数千万円と非常に高額なお金がかかってしまうケースがあります。
隣地との境界に注意
さらにやっかいなのは、隣地と高低差があり擁壁がある場合です。
一般的に擁壁は上の敷地を所有する人が擁壁の費用を負担します。
しかし、下の敷地で土地を削るなどの事情によって高低差ができてしまった場合は、下の敷地の所有者が費用負担となってしまうのです。
また、古くなった擁壁を作り変えるときに、その費用の分担を所有者の協議で決めておいたとしても、隣地が新たな所有者となってしまった場合は、協議した条件がわからなくなってしまうことがありトラブルに発展することがあります。隣地との境界に擁壁がある場合は注意が必要です。
擁壁のやりかえに高額な費用がかかる
購入を検討している物件に擁壁がある場合は、適格擁壁かどうか不動産業者に確認しておきましょう。
万一、不適格擁壁であれば擁壁のやりかえが必要になります。
前述したように、擁壁工事は高さや面積によって異なりますが非常に高額です。地盤や災害の際のリスクなどを考慮しますので実地調査をしてみないと費用がわかりづらいのです。また当然ですが擁壁の設置面積が大きければ大きいほど金額は高くなります。
擁壁に関するトラブル
擁壁に関するトラブルはかなり多いです。
擁壁をやりかえするコストは大変高額になります。そのため、安易に擁壁工事をするわけにはいかないです。
古い擁壁で、耐震性や耐久性が劣る状態にもかかわらず、そのまま維持していると、地震などの天災によって擁壁が崩れるリスクがあります。
また、強度が劣る擁壁が何かのきっかけで崩れるというケースもあります。
崩れた場合、崩れた擁壁の所有者がその責任を負うことになりますし、また、崩れた側に住宅が存在する場合など、第三者への影響も考えられます。
擁壁に関するトラブルは多いので、注意が必要です。
擁壁が関わる場合はプロにご相談をおすすめします
擁壁がある物件を購入する場合、ご紹介してきたようなリスクが伴います。
現存のままでいいのか、やりかえが必要なのかによって建築費用は大きく変わってきます。
後々のトラブルを避けるためにもこれらのことを把握した上で住宅の購入を検討しましょう。
判断が難しい場合はプロに相談されることをおすすめします。