「石膏ボード(プラスターボード)とはいったい何でしょうか」と聞くと、ほとんどの人から「画びょうを指すと白い粉がつくもの」という答えが返ってくるほど、知らない人はいない建築素材です。
では、なぜ石膏ボード(プラスターボード)がほとんどの家の壁や天井に使われているのかご存知でしょうか。
石膏ボード(プラスターボード)の存在は知っていても、注文住宅で家を建てたり、リノベーションをしたりするときになって、はじめて石膏ボードのすごさを知る人が多いのです。
そこで今回は家づくりにかかせない石膏ボードとはどんなものなのか、そのメリット・デメリットについて、またDIYに役立つ豆知識についてもご紹介しましょう。

目次
石膏ボードとは「石膏を板状にして紙で包んだもの」
石膏ボードとは、簡単にいうと石膏を紙で包み、施工しやすいように板状にした建築資材のことをいいます。
防火性、遮音性に富み、価格が安く施工しやすいことから、家の壁や天井などに広く用いられています。
そもそも石膏(せっこう)とは?
そもそも石膏とは、硫酸カルシウムを主成分とする天然の鉱物のことをいいます。
この石膏を120℃~150℃に加熱すると、石膏に含まれていた水分が蒸発し、焼き石膏になります。焼き石膏に水を加えると再び元の石膏に戻って固まる性質を利用して、石膏ボードを作っているのです。
石膏を使った身近なものでは、骨折をしたときのギプスや、歯医者さんで銀歯や金歯の型としても使われています。
プラスターボードと石膏ボードの違い
プラスターボードと呼ばれるものは基本、住宅建築業界では「石膏ボード」のことを指しています。
つまり「プラスターボード=石膏ボード」というわけです。
石膏は英語で「gypsum、ジプサム」でして、プラスターではありません。
ただ、プラスターといったときにそれは「石膏プラスター」を指していまして、石膏にその他の添加剤を入れたもので左官壁の材料に使われています。そこから「プラスター=石膏プラスター」で、「石膏ボード=プラスターボード」と呼ばれるようになったのではないでしょうか。
実務上は「石膏ボード=プラスターボード=PB」と呼ばれることが多いです。
業界的には。
▼石膏ボード業界最大手の吉野石膏によるメジャーなCM「タイガーボード」動画@Youtube
石膏ボードのメリット(強み)
では石膏ボードにはどのようなメリット、強みがあるのかを見ていきましょう。
安い・安価
石膏ボードは非常に安価です。
ここまで広く建築資材として普及した理由の一つと言っても過言ではありません。
一般的に使われている石膏ボードのサイズは横910mm×縦1,820mm×厚み9.5mmのものが多いのですが、これを合板の価格と比較すると、合板の素材にもよりますが約3倍~10倍ほどの差があります。いかに石膏ボードが安価なのかがわかりますよね。
非常に丈夫
石膏自体はもろいのですが、石膏ボードを作るときに厚紙で型を作ってから石膏を流し込んで固めます。
そのときに厚紙の繊維に食い込んで、紙の繊維と一体化しながら固まりますので非常に丈夫な素材となります。厚紙と石膏が結合していますので、面の力は非常に強くなります。
さらに、石膏ボードは火に強いというメリットがあります。
石膏ボードの重量の20%が結晶水、つまり水分でできています。結晶水は通常の状態では蒸発することはありませんが、熱が加わると分解し蒸発を始めます。このとき、石膏ボードの温度上昇を遅らせると同時に、石膏そのものが熱や火を伝えないように防ぐ役目をするのです。
リサイクルして再利用できる
石膏ボードは100%リサイクル可能な素材です。
リサイクル場で端材分離機に掛けられ、石膏と紙に分離されます。その後、石膏はまた石膏ボードの原料として、セメントの原料として、また、土壌改良材としても再利用されるのです。
石膏ボードのデメリット(弱み)
火に強く丈夫で安価な石膏ボード。
そんな石膏ボードにもデメリット、弱みがあります。
紙がないと、非常にもろい
部屋の壁に物をぶつけるとへこんだり、穴が空いてしまったりという経験はありませんか?
石膏ボードは「面の力」には強いのですが、「点」の力には弱いため、穴が空いてしまうのです。
画びょうや釘を打つとポロポロと崩れてしまうのも石膏ボードの弱みです。
また、前述の通り、周りの厚紙と結合することで丈夫になる石膏ボードですが、紙がなければ非常にもろいのです。キズがつきやすく、へこむと元に戻らないところが石膏ボードの弱みといえるでしょう。
再利用しないと、環境に悪い
前述した通り、石膏とは、硫酸カルシウムを主成分とする天然の鉱物です。
石膏ボードをリサイクル場で処理をおこなうと100%再利用可能なのですが、埋立地で処分し、さまざまな要因が重なることによって危険な硫化水素ガスを発生させてしまうのです。そうなると非常に環境に悪いだけではなく、最悪人の命まで奪ってしまいます。
現在では、石膏ボードの埋立処分が全面禁止になるなど対策が練られていますが、リサイクル場の容量にも限りがあります。
石膏ボードは、きちんとリサイクルすれば100%再利用可能な資源ですので、今後、処分場を増やすなどの展開に期待したいところです。
石膏ボードの種類を解説
ではここからは、石膏ボードにはどのような種類があるのかをご紹介していきましょう。
9.5mm厚の石膏ボード
厚さ9.5mmの石膏ボードは、一番標準的なものとして部屋の壁や天井の下地材として使われています。
建築基準法では、通常の火災による火熱が加えられた場合に、次の3つの要件を満たすと防火材料と分類されます。
- 燃焼しないこと
- 防火上、有害な損傷(変形、溶接、き裂など)を生じないこと
- 避難上、有害な煙またはガスを発生しないこと
この3つの要件を満たしたうえで、要件を満たさなくなるまでの加熱時間の長さによって「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」に分類されています。
- 不燃材料:加熱開始後20分
- 準不燃材料:加熱開始後10分
- 難燃材料:加熱開始後5分
9mmの石膏ボードは、このうち準不燃材料に分類されています。
12.5mm厚の石膏ボード
12.5mmの石膏ボードも標準的なものですが、9.5mmとは違って厚さがあるため不燃材料と分類されています。こちらも部屋の壁や天井の下地材として広く使われています。
耐水・防水石膏ボード
石膏ボードは水や湿気に弱いため、台所や洗面所といった水をよく使う場所には耐水・防水の石膏ボードを使用することで、曲がりやクネリを防ぐことができます。こちらも9.5mmと12.5mmがあります。
化粧石膏ボード
石膏ボードを貼った後、仕上げにクロスを貼りますが、石膏ボード自体に板目やクロス模様を施したものがあります。化粧石膏ボードは、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着し、分解、低減する機能を持ったものがあります。
日本の石膏ボードメーカーは大手2社で寡占
石膏ボードメーカーは、吉野石膏、チヨダウーテの大手2社の寡占となっています。
吉野石膏
石膏ボードは、115年の歴史を誇る吉野石膏が圧倒的なシェアを誇っています。その率なんと80%以上。石膏ボードの名前である「タイガーボード」は、この吉野石膏の商品名なのです。
チヨダウーテ
チヨダウーテは1955年から石膏ボードの製造販売を手掛けている会社です。チヨダウーテは石膏ボードだけではなく、グラスウールやセメント板、ロックウール系吸音板なども製造しています。